TBSテレビ
ヤング720音源

01 監獄ロック・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ・タイガース
02 都会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ・タイガース
03 ルック・アウト・クリーブ・ランド・・・・・ザ・ゴールデン・カップス
04 マイ・ベーブ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・モップス
05 ストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラブ・・・・・ズーニーブー
06 レット・ミー・ラブ・ユー・・・・・・・・・・・・・ザ・ゴールデン・カップス
07 ノック・オン・ウッド・・・・・・・・・・・・・・・ズーニーブー
08 ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フラワーズ
09 シスター・サーベイション・・・・・・・・・・ザ・ゴールデン・カップス
10 ハンガリー舞曲第5蕃・・・・・・・・・・・・井上宗孝とシャープ・ファイブ
11 幸福の朝・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リリーズ
※曲名に関しては当時の私のメモをそのまま書き写したので、正確でない
 ものがあるかもしれません。また、08については曲名がわかりません。ご了承下さい。


これらの音源は既に紹介済みのタイガース音源などを録音したテレコとは違う、我が家に初めてやってきたトリオのオープン・デッキによるものであり、イヤホン・ジャックを使ってライン録音をしている。
そのためテープのグレード(残念ながらここで使ったテープはいつもと同じように、秋葉原で買ってきた放送局の放出品である。)を除けばまずまずの状態であると思う。
曲数は少ないが、ある意味でGS末期の状況からミュージシャン達が自分たちのやりたい音楽を模索し始めた頃の過渡的な貴重音源であるともいえ、日比谷野音に足げく通っていた当時の事と思い出がオーバーラップして非常に懐かしい。
このサイトで紹介している「成毛滋とジプシー・アイズ」の音源とともに、時代の変遷を感じる事ができる化石的な音と言ってもいいかもしれない。

タイガースの2曲は当然ながらトッポ脱退後のものであるが、タイガースが「監獄ロック」のようなシンプルなロックン・ロールをレパートリーにしていたというのは私にはあまり記憶がなくて、曲構成がシンプルなのと演奏がファンの嬌声にかき消される事がないという2点でその力量が分かってしまう怖い曲だ。
あの当時シローはギターを持っているだけで弾いてはいなかったそうだが、この演奏ではしっかりサイド・ギターの音が聞こえる。
この音はシローのものなのだろうか?
ファズを使ったタローのギターとベースのユニゾンがかなり重い雰囲気を出しているが、どちらかといえば軽いジュリーの声質とバックの音のバランスが今ひとつという感じだ。
しかし、この時期のタイガースの牽引者は明らかにジュリーだという事が良く分かる演奏には違いない。
04 はモップスのブルース。
星勝のヴォーカルが聞けるこの曲は、あの時代のバンドが必ずといっていいほどやっていたスタイルのブルースだ。
あの当時ポップな音楽をやるのは犯罪だと言わんばかりのムードが確かにあって、日比谷野音などではこういったスタイルの音楽が好んで演奏されていたような気がする。
私自身もそんなふうに思っていた時期があって、今から思えば気恥ずかしい限りだが、みんながそういう意識を持っていたのだと思う。
「ストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラブ」は今でも人気が高い曲だが、あの頃のバンドがこれをやっていたというのは、少なくとも私はズーニーブー以外では知らない。
というよりも私はズーニーブーがけっこう好きで、ステージを何回も見ていたのでズーニーブー以外の印象がないのかもしれない。
この演奏は今聞いてもカッコイイと思うが、あの頃の私はもっと羨望に近い眼差しでこの演奏を見ていたような気がする。
もちろん町田義人のヴォーカルも良かったが、それ以上に私が好きだったのはもう一人のシンガー、上地健一のハスキーな歌声だったし、テレキャスターをつかったギタリスト高橋英介のカッティングにも心惹かれた。
今こういうカッティングを聞かせてくれるギタリストは少ないが、それまでのGSの演奏に馴染んでいた私の耳に、このギターの音と弾き方は非常にプロフェッショナルなものに思えたのだ。
このバンドが試みていたR&Bへの挑戦に批判的な意見を言う人もいるが、R&Bとかブルースとかの生まれ、血筋がモノをいう音楽の世界で、とやかく批判をいう事を私は避けたいと思う。
07 の「ノック・オン・ウッド」だってカッコイイし、いくら和製サム&デイブと言われた彼らだって本物と比較するのは酷だ。
私にとってはズーニーブーのステージは出来る事なら今でも見たいくらいだ。
06 の「レット・ミーラブ・ユー」は彼らのライブ・アルバム「ザ・ゴールデン・カップス・リサイタル」にも収録されていたので、得意なナンバーだったのかもしれない。
ギターがエディに代わってルイズルイス加部が担当しており、とするとベースは林恵文だろう。
エディに代わってルイズルイス加部がリード・ギターを弾いていたのは1969年4月から12月までという短期間だから、ライブ・アルバムと曲が重複しているとはいえ、テレビ音源というのは貴重なものかもしれない。
唸るベースとハード・ドライヴィングなギターがカッコ良く、テレビ収録という事を意識したのかレコードで聞ける音と違ってコンパクトにまとめられているようだ。
使っているギターは不明だが、あの青いストラトだろうか。
このページのトップにルイズルイス加部がジャズ・マスターを使っている写真を使ったが、チョーキングがやりにくいあのギターでどんな音を出していたのか聞いてみたかった。
ここで使っているギターがジャズ・マスターでない事だけははっきり分かる。
08 のフラワーズの曲はタイトル不明。
ジョーのヴォーカルとギターのユニゾンから始まるスロー・ブルースだ。
たぶんジョーのヴォーカルに負うところが大きいのだと思うが、確かに日本人離れした音ではある。
前のカップスにしてもこのフラワーズにしても、今聞いてみればずいぶん大人しい音だという印象を受けるが、今日の徹頭徹尾同じリズムでかき鳴らす音だけが大きいロックに比べれば、音楽的パワーは格段にこちらの方が上だ。
10 のシャープ・ファイブの演奏は私にとって宝物だ。
正直に言えば私は日本人ギタリストの中ではシャープ・ファイブのギタリストである三根さんが一番好きであり、もしかしたらそれは信者といってもいい位かも知れない。
ここ数年何度もライブに足を運んで、その度に感動しそしてその実力に感嘆して帰ってきたものだ。
ここで聞ける音も30年も昔の音だとは思えないレベルだ。
あの頃音楽シーンを賑わしたGSの演奏は今になって聞いてみるとガッカリさせられる事も多く、ただブームに踊らされただけの「にわか仕込み」のGSスター達の悲しい現実が見えてしまう事がある。
しかし、あの頃シャープ・ファイブに熱狂した私の耳は間違っていなかったんだと、妙に納得させられてしまう演奏がここで聞けるのだ。
一音一音を大事に歌わせるマインドとそれを確実に実行できる技術力がある演奏は、30年という長い歳月を経た今でも一向に風化する気配を見せない。
ちょっと大袈裟かもしれないが、「輝ける原石」みたいなものだと思う。
11 の「幸福の朝」をやっているリリーズについて知っている事は、デビュー曲が「ドアをあけて」というタイトルだったというだけで他にはまったく記憶がない。
ただこの歌が好きだという理由だけで消去されることなく今日まで残されたテイクだと思う。

今のテレビ状況から考えると、何故に朝っぱらからこんな番組をやっていたのかと思うが、それを録音していた私もよほどヒマだったという良き時代だったのだ。
あれから30年を経た今日になって新たな価値を持った・・・・・かもしれない音源をこうして皆さんに紹介できるのは、ネットという手段があればこそで、あの時代にはまったく想像もつかなかった事だ。
広い世の中には私よりも多くの音源を確かな記録とともに持っている人もいる筈であり、そういった音源が発掘される事を期待したい。

本文とはまったく関係がないのだが、1978年8月号のプレイヤー誌にちょっとした沢田研二の特集が組まれている。
ただここで書かれているのはありふれたインタビュー記事などではなくて、沢田研二のリサイタルのリハーサルからPAを含めたあらゆる機材の紹介を、リハーサルの進行に従って順を追って書いているのだ。
1978年4月30日、東京・帝国劇場でのリハの模様を克明に記録したもので、沢田研二にはまったく興味がない私にとっても面白い内容だ。
考えてみればGSのこういうハード面を記録したものはまったくなくて、誰かがやらないかと心待ちにしているのだが、一向に出てくる気配がない。
誰かがやらないとますます資料はなくなってしまうし、人々の記憶だって忘却の彼方へ消え去るのみなのだ。
これが本文の中で紹介したゴールデン・カップス・リサイタルで、1969年7月30日・東京渋谷公会堂でのステージを収録したもの。A面でダン池田とニュー・ブリードがバックを務めているが、バンドだけのB面の方が出来が良い。
B面はツェッペリンやディープ・パープルなどのコピーをしているが、今聞くとけっこうツライものがある。
特にパープルの「ハード・ロード」(これは難しい曲だ)はだいぶ音を省略していて、演奏力に定評のあったカップスでさえこんなものだったかのかと思う。
本家のパープルの1970年のライブと比べると、月とスッポン以上の圧倒的な差だ。
とはいえカップスは良いバンドには違いなく、改めて聞いてみるとこのバンドを音楽的に引っ張っていたのはミッキー吉野だという気がする。
A面のお馴染みのヒット曲をダン池田のバック無しのカップスだけの演奏で聞いてみたかった。