THE CLIFF RICHARD SHOW
with THE SHADOWS

LIVE AT THE ABC KINGSTON 1962

THE SHADOWS
01 Tony Marsh Intro
  Apache/Shazam

02 Shadoogie
03 Wonderful Land
04 All My Sorrows
05 Quarter To Three

06 Nivram
07 Little B

08 FBI
CLIFF RICHARD
   & THE SHADOWS

09 Tony Marsh Intro
10 Do You Wanna Dance
11 Dim Dim The Lights
12 My Blue Heaven
13 Razzle Dazzle
14 Rovin' Gambler
15 Save My Soul
16 When The Girl In Your Arms
17 I Got A Woman
18 The Young One Medley
  Lessons In Love
  Got A Funny Feeling
  The Young One
19 We Say Yeah
2002年リリース
EMI RECORDS LIMITED 
724353793128
本文でも触れているが、ジャケッ
トもかなり良い。真ん中の写真を
見て頂ければ分かり易いが、普
通サイズのCDケースと比べると、
ジャケットの大きさが分かる。
昔のアナログ・シングル盤と同じ
サイズのジャケットで、どうせ紙
ジャケにするならこれ位の事は
して欲しい。
このサイズだとCDショップの通
常の棚には入らないので、ジャ
ケットの正面を客に見せるカタチ
で店に置かれる事になる。
良く考えているのだ。
左から3番目の写真は付録?の
ブロマイドとミニチュアのツアー・
プログラム。
当サイトと相互リンクを貼ってい
「ポップ・ステーション」の松本
氏がこのプログラムの本物を持
っているというので驚いた。
という訳で、いちばん右側の写
真はその松本氏の膨大なコレク
ションの中から借りた本物の1960
年ツアーのプログラム。
写真をクリックすると大きいのが見
られるので、興味がある人は見て
ネ。
※4月24日の追加情報:先に紹介し
 たポップ・ステーションのHP、「懐
 かしのシーン」のコーナーでクリフ
 &シャドウズの古ーい映像をアッ
 プしているそうです。
 そちらもあわせてご覧下さい













最近CDショップへ行くと昔だったら考えられないようなものが次々と発売されているのを目にする。
一体誰がこんなの買うんだと思うような音源までがCD化されたり、復刻されたりしているようで、それは私のような人間には喜ぶべき現象なのだが、あれでレコード会社の方はどれほどの利益が出るのだろうといらぬ心配までしてしまう。
クリフ・リチャードが特に英国で絶大な人気を得ている事は知っているが、決して新譜とはいえない本作のようなCDがどれほど売れるのか素朴な疑問を感じる。
こういった作品を今後もリリース(音源があればの話だが)してもらうには、ある程度の商業的成功が必要なワケで、そこのところが気になってしまうのだ。

さて本作は1962年のステージの模様を収録したもので、まずそのクオリティに驚かされる。
1962年というのは日本でいえばまだグループ・サウンズ以前の話で、コニー・フランシスのヒット曲を弘田三枝子や中尾ミエなどがカバーしていた時代だった。
参考までに手元にある資料から1962年のヒット・チャートを賑わしていた人達をピック・アップしてみると、シェリー・フェブレー(ジョニー・エンジェル)、リッキー・ネルソン(ヤング・ワールド)、チャビー・チェッカー(スロー・ツイスト)などがビルボード・トップ30の上位にランク・インしている。
やっとツイスト・ブームが始まった頃で、日本でバンドをやろうとする人達はジャズやハワイアンを志す人が多かったようだ。
特にこの時代の日本の歌手のレコードを聞くとかなり音が悪くて、一度それを気にしてしまうとどうもそちらに気持ちが行ってしまって音楽に集中出来ない時がある。
ライブになると更に音のクオリティは落ちるような気がするし、もっと気になるのは演奏の悪さだ。
この時代の日本のポピュラー界は外国のヒット曲をカバーするのがやっとで、オリジナリティなんていう考えは毛頭なかったのかも知れない。
しかし、少なくても本作品で聞けるシャドウズ&クリフ・リチャードの音は、40年を経た今日聞いてもまったく遜色を感じないものだ。
これは驚くべき事だ。
最新の技術を使って蘇った音だとは思うが、それにしてもこういうグレードの高い音が保存されていたというのも日本の状況とは大きく違うところだ。
日本ではあれ程ののブームだったグループ・サウンズのライブ音源など皆無に等しく、仮に残っていたとしてもオーディエンス録音か質の悪いアマチュア録音が多くCD化には難があるものが多い。
ところが洋楽ものはけっこう音の良いものが発掘されてリリースされている。
ビートルズのBBCライブ(音は良くないが)もそうだったし、最近ではサーチャーズの1964年、1967年のラジオ・セッションを集めたものがリリースされ音質は申し分ないレベルなのだ。
文化の違いといってしまえばそれまでだが、そういった底力を羨ましく感じてしまうのだ。

今回のクリフ・リチャード&シャドウズの音も、40年も前の音であるから音が若いとか、その後の演奏に比べて熟成度が低いとかの違いはあるが、それは音楽が生きているものである事を考えれば至極当然の事だ。
この日のステージにはシャドウズとクリフ以外にも出演者(いわゆる前座)がいるが、当然の事ながらCDに収められたのはシャドウズとクリフのみだ。
シャドウズの演奏曲は「Shadoogie」、「Wonderful Land」、「Nivram」、「FBI」など、その後にも長く演奏される事になるシャドウズの定番曲が演奏されている。
どれも後期のものに比べればシンプルな印象はあるものの、この時期すでにこれらの曲は完成されていたと言っても良いような演奏だ。
比較的新しい(といってもかなり古いが)シャドウズやハンク・マーヴィンのソロなどで演奏しているこれらの曲と比べてもほとんど違和感は感じない。ほとんどスタイルを変えていないのだ。
大抵のアーティストは時間の経過と共に演奏スタイルや音、そしてアレンジまで変えてしまいファンをがっかりさせる事も多いが、どうもシャドウズに関してはそういう事は無かったようだ。
それを進歩がないと捉えるのか、或いはもともと完成度が高かったから変える必要がなかったと思うか、どう考えるかは個人の自由だが、少なくても私にとってはその頑固さというか一徹さは嬉しいものだ。
使っているギターはストラトだろうか。
この時代のシャドウズの写真を見るとストラトを抱えている事が多いし、聞かれる音からしてもストラトのような気がするが、何れにしても良い音だ。
フェンダー社がストラトの販売を開始したのは1954年とされているから、この日のステージで使われたのがストラトだとすれば、ライブ録音で残された数少ないこの時代の音という事になる。
別の観点から考えても貴重な音だと言えるのだ。

シャドウズが8曲の演奏を終えて、クリフの登場となる。
ビートルズの登場により、それ以前のイギリスのロック・シーンは見過ごされがちだが、これを聞くとイギリスで最初のロック・スターといわれたクリフの人気の程が窺える。
何故か「Move It」や「Living Doll」などのヒット曲は演奏されていないが、ブレイクする寸前の「Do You Wanna Dance」が1曲目に演奏されている所など非常に興味深い。
全体的にロックン・ローラー、クリフが炸裂している好ましい演奏が続くが、邦題で「恋のワルツ」とされた16の「When The Girl In Your Arms」などは、オーディエンスとの大合唱ムードで暖かい雰囲気が漂う。
ひとつ残念なのはこの年の始めに大ヒットした「Young One」がメドレーで演奏されてしまっている事だ。
クリフのファンの間ではこの曲を持ってして彼のベストとする人も多い彼の代表曲で、それがメドレーで演奏されてしまったのはいささか残念だ。
「Young One」はイギリスのヒット・チャートでは、この年の1月20日から5週間1位に輝いたというから、このアルバムが録音された3月7日には1位から転落していたワケで、まさかそのせいでメドレーに格下げされたワケでもあるまいが、せめてこの曲はフル・ヴァージョン完奏で聞きたかった。
見開きジャケットには3月のヒット・チャートベスト・テンが印刷されているが、それを見ると確かに「Young One」は4位にランクされていて、この前のチャートまでは5週ナンバー・ワンだったと記述されているのが見られる。
この曲で聞けるハンク・マーヴィンのギターが良いだけに非常に残念なメドレーだ。
ともあれこのアルバムが一連の「古い音源発掘シリーズ」(そんなのあるのか?)の中では群を抜いて良い作品である事は疑いようがない。
録音はまるで昨日したように新鮮だし、演奏のクオリティも申し分ない。
この録音はかつてアルバムでリリースされる予定があったそうで、訳あってお蔵入りになっていた音源だから質が良いのは当然の事だが、改めて我が日本との格差を感じてしまうのだ。
クリフ&シャドウズは過去に何枚かのライブ・アルバムを出しているが、本作が私にとってのベストになりそうな気配である。
因みに「Spacial Limited Edition」とされた見開きの大型紙ジャケットも極めて良いし、同梱された4枚のブロマイド、そしてこのツアー・プログラムのミニチュアが入っているなど、付録?も盛りだくさんでファンの心理を掴んだ配慮が嬉しい。
ブリティッシュ・ロックの歴史という意味からしても、クリフやシャドウズのファンのみならずロック・ファン必聴の1枚だ。