Ernest Tubb's Fabulous Texas Troubadours
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Side-A 01 Time Changes Everything 02 Honey Finger 03 Before I Lost You 04 Take That 05 My Baby's Comin' Home 06 Gardenia Waltz Side-B 01 Cool It 02 Gone 03 Almost Everything A Lonely Boy Needs 04 E.T. Blues 05 They'll Never Take Her Love From Me 06 Walking The Floor Over You |
Member Leon Rhodes Bud Charleton Jack Drake Jack Greene Cal Smith DECCA DL74745 1966?-1967? |
テキサス・トラバドースは1940年代から1960年代にかけて活躍したカントリー・シンガー、アーネスト・タブのバックを務めたバンドである。アーネスト・タブはホンキー・トンク・サーキット人気を得ていた人だったが、ある時ジューク・ボックスから流れている自分の歌がアコースティック楽器の伴奏によるレコードであった為に、ホンキー・トンクの騒音にかき消されて良く聞こえないという事実に遭遇した事がある。そしてそれらの事を解決するべく、いち早くバンドにエレキ・ギターを導入し、後にそれがカントリー・バンドのスタンダードになった、いわば先駆けの人なのである。
1941年にヒットした「Walking The Floor Over
You」を皮切りに多くのヒットを飛ばし、長きに渡って活躍したが、私のようなギター愛好者にとって嬉しいのは、バック・バンドのカッコ良さであった。
正直に言えば、ヒルビリー歌手の大御所と言われたアーネスト・タブの歌声を私はあまり好きにはなれず、もっぱらギターとペダル・スティールがカッコ良いインスト物を中心に聞いてきたようなところがある。
最近はこういうアルバムにはお目に掛かれないが、昔のバンド・サウンド系カントリー・アーティストのレコードには結構インスト曲が含まれているものがあった。
バック・オウエンスのアルバムにはたいてい1曲か2曲のインストが含まれていたし、マール・ハガードのストレンジャースのアルバムにも聴き応えのあるインストが多数含まれていた。
誠に残念な事に日本の多くのギター・ファンの間ではこういうインストの認知度は極めて低く、いつも歯痒い思いをさせられる。
日本のギター・インスト・ファンは何故あんなにもベンチャーズ一辺倒なのかと、いつも不思議に思う。
私もベンチャーズは好きなのだが、いわゆるエレキ系のイベントを見に行くとプロもアマも演奏曲が毎度々ベンチャーズの、しかもモズライト時代のヒット曲ばかりなのにはいつも辟易とさせられる。
私がこのホーム・ページを開設した理由のひとつには、「テキサス・トラバドース」のようなカッコ良いバンドを、ギター・ミュージックが好きな人達に少しでも知ってもらえたらいいな、という気持ちがあったのだ。
ウエスタン・スイングという言葉はもはや死語に近いが、このカテゴリーの音楽の完成度を最も高めたのが「テキサス・トラバドース」であったと云えるだろう。
不勉強にして今回紹介するアルバム「Ernest
Tubb's Fabulous Texas Troubadours」のリリース年がハッキリしないのだが、この作品に収められている曲の一部が1966年6月の録音である事から、1966年末から1967年にかけてのリリースであったと思われる。
先にちょっと触れたバック・オウエンスのバンド、バッカルースやマール・ハガードのバンド、ストレンジャースなども主抜きでバンドとしてのソロ・アルバムを出しているが、このアルバムもその類のアルバムで、主のアーネスト・タブは幸か不幸か不在である。
この作品は全12曲の収録曲のうち6曲がインストという驚くべき内容で、選曲も良いし演奏レベルも極めて高い。
しかも半数近くの曲でメンバー自身が曲作りに参加しているのだからスゴイ。
文字通りウエスタン・スイングの醍醐味が堪能出来る素晴らしいアルバムであり、他の何枚かのアーネスト・タブ名義のアルバムと共に彼らを代表する作品の1枚として挙げられる重要なアルバムだと思う。
1曲目のキャル・スミスのヴォーカルをフューチャーした軽快な曲や、5曲目のレオン・ローズの拙いヴォーカルをフューチャーしたものも悪くはないが、やはりこの作品の中ではSide-Aの2,4,6や、Side-Bの1,4,6などのインストが圧倒的にイイ。
2、の「Honey Finger」はクレイ・アレンとレオン・ローズのペンになる曲で、右チャンネルにバッド・チャールトンのペダル・スティール、左チャンネルにレオン・ローズのギターを配したウエスタン・スイングのサンプルのような曲。
当然の事だがジャズやフュージョンとも違うし、ましてやロックとも全然違うギター・スタイルでカッコイイ事この上ない。
今のカントリー・ミュージックの世界にはこういうスタイルの音楽は無いに等しく、「アメリカの伝統音楽の灯を消してもいいのか!」と叫んだ映画「ブルース・ブラザース2001」のワンシーンが思い出される。
4、の「Take That」ではバッド・チャールトンとレオン・ローズがソロを競う曲で、「Honey
Finger」のような緊張感はないが、これも素晴らしい出来だ。
フィドラーとして名高いジョニー・ギンブルの作品「Gardenia
Waltz」も出色だ。
この曲ではバッド・チャールトンのスティールが全面的にフューチャーされているが、何故ペダル・スティールにはこんなにもワルツが似合うのだろうか。
このバンドに限らずスティールでワルツを演奏した曲はたくさんあるが、それらの曲もおおむね出来は良いようで、それは取りも直さずペダル・スティールとワルツの相性の良さを証明しているのではないだろうか。
ペダル・スティールの巨人としてはバディ・エモンズが有名であるが、いつ頃からかバディ・エモンズはジャズに寄った線で活動していて、私としては今ひとつ面白くないのだ。
彼の「スティール・ギター・ジャズ」などのアルバムも持っているが、聞くチャンスは極めて少なくて、どうしてもカントリーをやっていたバディの方が私にとっては面白いのだ。
ジャズをやっている時のバディ・エモンズを一言で言ってしまえば、「凄いけど面白くない」のだ。
そこへ行くとバッド・チャールトンがカントリー音楽という枠の中で、スイング寄りの名演を多く残してくれた事は、大袈裟に云えばアメリカ音楽の大きな財産だと思う。
Side-Bの1、「Cool It」も私のお気に入りだ。
1分30秒程の短い曲なのだが、これもウエスタン・スイングの名演のひとつだと思う。
バッド・チャールトンのスティールの音にはいつも独特の深みが感じられるのだが、この曲に於いてはその傾向が一段と強いような気がする。
プレイヤーそれぞれに音が違うのは当然の事だが、こういう深みのある音というのは特にバッド・チャールトンに顕著なように思えて、私としては特に好きな音なのである。
特にソロに入る時のカッコ良さにはいつも身震いしてしまう程だ。
Side-Bの4曲目、「E.T.Blues」はレオン・ローズとバッド・チャールトン二人の共作で、ETとはもちろんアーネスト・タブの事であろう。
印象的なリフの後、二人が交互にソロを取り合うイカシた構成だ。
左チャンネルのややリバーブが掛かったレオンのギターも音に厚みがあって良いし、右チャンネルのバッド・チャールトンのスティール・ギターも相変わらず深みのある良い音でこの曲を盛り上げる。
レオン・ローズのプレイを唐突過ぎるとか強引だとかいって嫌う人もいるようだが、私にとっては正にその部分が大いなる魅力なのだ。
両刃の刃といったところか?
B面最後の曲はアーネスト・タブが1941年に初めてヒットさせて、極貧生活から脱出するキッカケになった記念すべき曲で、アルバムの最後に主の曲を入れて敬意を表したという事なのだろうか。
レオン・ローズの12弦エレクトリック・ドブロがフューチャーされた曲であるが、本家のアーネスト・タブのクセのある歌入りと比べるとずいぶん雰囲気が違う仕上がりになっている。
今紹介してきたのはインストばかりだが、歌入りももちろん良い。
アーネスト・タブの歌声が今ひとつ好きになれない私としては、むしろこちらの方が聞き易くて馴染みやすい。
Side-Aの5曲目、レオン・ローズのヴォーカルがフューチャーされる「My
Baby's Commin' Home」で、曲の半ばからフワァーという感じで出てくるバッド・チャールトンのスティールなどは正に正統的なカントリーのスタイルで、むしろこういうカタチの方が彼らの本筋なのだろうと思う。
聞き逃せない歌判も多いのだ。
残念ながらここで紹介したアルバムは現在のところCD化されていないし、中古屋さんを巡ってLPを入手するのも至難の業だろうと思う。
ドイツのベア・ファミリーからアーネスト・タブ&テキサス・トラバドースの音源がCD化されてボックスセットとして何組か発売されているので、それらを買えば既発音源はもちろんの事、中には未発表音源も入っているようで食指が動くのだが、何せ高いのが難点だ。
普通のCDで発売されているのが、Side-Aの2曲目「Honey
Finger」で、RHINOから出ている「Legends of
Guitar, Vol.1 Country編」に収められている。
さらにCDショップで見かける事は少ないが、彼らの1965年のライブ盤がCD化されていて、インストも収録されている。
先に紹介したRHINOのコンピレーション盤はこういうスタイルのギターを聞きたい向きには格好の入門書になってくれる。
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バディ・エモンズがテキサス・トラバドースに在籍していた時代のアルバムで、これはライブ盤。 テネシー州ナッシュビルにあるアーネスト・タブのレコード・ショップで行われていたミッドナイト・ジャンボリーというパーティの実況録音盤で、多数のゲストが参加している。 Side-Aの7曲目にバディ・エモンズのペダル・スティールをフューチャーした「Rose City Chimes」というインストが収録されており、かなりカッコイイ。 チャイムを模したペダル・スティールでのハーモニクスや、チェット・アトキンスを意識したスティールによるギャロッピングなど聞き所は多い。 バディ・エモンズにはこの他にも何枚かのライブ盤があるが、個人的好みで云えばここで聞ける演奏がベストだ。 レオン・ローズのギターは短い演奏時間だが、彼らしさが出ている好演奏だ。 MIDNIGHT JAMBOREE Ernest Tubb's and His Texas Troubadours DECCA JDL 5075(国内盤) |
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カントリー・ギターの巨人達の演奏が収められたRHINOのコンピレーション盤。 ジミー・ブライアント、マール・トラヴィス、チェット・アトキンス、ドク・ワトソンそしてバーズまで入っている念の入れよう。 このCDの10曲目にボーナス・トラックとして、テキサス・トラバドースの「Honey Finger」が収められている。1曲だけだけど手軽に安くテキサス・トラバドースの演奏を楽しみたい人にはいいかも。 これで気に入ったらお金を貯めてベア・ファミリーのボックス・セットをどうぞ。 Guitar Player Presents LEGENDS OF GUITAR-COUNTRY, VOL.1 RHINO RZ 70718(輸入盤) |