Skeeter Davis
RCA COUNTRY LEGENDS

01 Rock-A-Bye Boogie
02 I Forgot More Than You'll Ever Know
03 Foggy Mountain Top
04 Single Girl
05 (I Can't Help You) I'm Falling Too
06 My Last Date(With You)
07 He Says The Same Things To Me
08 I Can't Believe That It's All Over
09 Oh Boy!
10 There's A Fool Born Every Minute
11 The End of The World
12 I'm Saving My Love
13 Gonna Get Along Without You Now
14 What Does It Take (To Keep A Man Like You Satisfied)
15 Bus Fare to Kentucky
16 Homebreaker
2001年リリース
BUDDHA RECORDS
74465 99829 2


スキーター・デイヴィスの名を知る人達にとって、彼女のイメージとしてもっとも定着しているのは「エンド・オブ・ザ・ワールド」の大ヒットによる、ポップ・シンガーとしてのキャリアだろうと思う。
そういう見方ももちろん間違いではないと思うが、彼女がRCAに残した数々の録音にはポップ・シンガーのひと言で片付けてしまうのには惜しいものが山盛りなのだ。
そんなスキーター・デイヴィスの魅力を手軽に楽しめる1枚がリリースされた。
1931年ケンタッキー生まれの彼女のキャリアは、ハイスクール時代に仲の良かったベティ・ジャック・デイヴィスとデュエットを組み、1953年にRCAのオーディションを受けて合格した事から始まる。
デイヴィス・シスターズとして「忘れてあげたワ」を吹き込んで好評を得たが、不運な事にこの年の8月に自動車事故に遭ってベティは即死し、スキーターも重傷を負った。
後に傷から回復したスキーターは亡くなったベティに代えて、ジョージア・デイヴィスとデイヴィス・シスターズをを組んで活躍したあとにソロとして独立し、数々のヒットで知られるようになったというのが簡単な履歴だ。
本作はそうした最初期の録音から大ヒット曲「エンド・オブ・ザ・ワールド」を含む1960年代の録音を中心に、1970年代初期の録音までを網羅したコンピレーション盤だ。
蛇足ながら今年(2001年)リリースされた本作を含むこの「Country Legends」シリーズは、なかなか良いものが揃った好企画だ。
注目すべきは本作に収録された全16曲のうち6曲がチェット・アトキンスのプロデュースである事と、何曲かでチェットのギター・プレイが聞ける事だ。
1〜4までがデイヴィス・シスターズの録音で、2の「I Forgot More Than You'll Ever Know」が初代デイヴィス・シスターズの前出「忘れてあげたワ」である。
1曲目の「Rock-A-Bye Boogie」は1954年のライブ録音で、ソロは弾いていないが若きチェットの演奏が聞けるというレアなものだ。
チェットらしい演奏が聞けるのは2,3,4,などで、特に3の「Foggy Mountain Top」でのソロがカッコ良く、チェットのソロ名義のアルバム以外(バック・ミュージシャンとしてのチェットという意味で)で聞ける演奏の中で最も私が気に入っているひとつである。
全体的にギターが聞ける部分は少ないものの、メロディアスな曲が多くて十二分に楽しめる内容である。
それにスキーターが得意とした一人二重唱や三重唱が存分に聞けるなど、興味深い部分は多い。
この一人二重唱、三重唱というのはどこからヒントを得たのだろうか。
不運な事故によってベティという信頼すべき相棒を失い、後にベティの代役としてジョージアを得たものの、代役は代役でしかなくスキーターは満足を得られなかったのかもしれない。
そんな事からデイヴィス・シスターズのコンセプトを継承すべくとった策がレコーディングによる「重唱」だったという事なのだろうか。
しかし、それがスキーターの個性を際だたせたのは事実で、他のヒット・シンガーと一線を画した紛れもない「スキーターらしさ」だった。
器楽演奏にも大いに興味を持つ私にとって、この「重唱」は歌というよりも器楽に近いものとして捉えているところもあって、その部分が私をスキーター好きにしている最も大きな要因なのかもしれない。
それに最初にコンビを組んだ相手の名がベティ・ジャック・デイヴィスで、そのベティが事故で亡くなった後に組んだ相手がジョージア・デイヴィス、そして本人の名がスキーター・デイヴィスというのはデイヴィス絡みで、いかにも出来過ぎているではないか。
その辺の詳細にウラ事情があるのかどうか私は知らないが、何となく因縁めいたものを感じてしまうし、そんなところにも後にソロ活動で見せた「重唱」がデイヴィス・シスターズの面影を踏襲しているのではないかと感じさせるのだ。
それにしても最近のコンピレーション盤はなかなか親切で、ジャケットには各曲の詳細な録音データが添えられていて、参加しているミュージシャンの名前を知ることが出来る。
チェット・アトキンスを始めとして、ウェイン・モス、チップ・ヤング、フロイド・クレイマー、ハンク・ガーランド、ピート・ドレイク、グラディ・マーチン、チャーリー・マッコイ、アニタ・カー、ジェリー・バードなどで、もう盆と正月が一緒に来たようなオール・スターの祭典なのだ。
しっかりとしたバックに支えられたスターキーの歌声は素晴らしく、前にも述べたようにメロディの美しい曲が多いので、50年代、60年代のヒット曲などに興味を持つ嗜好であれば、本作はカントリー・ミュージックというカテゴリーを意識せずに楽しめるだろう。
現在、本作以外に入手が容易なスキーターのアルバムは2〜3点のベスト・アルバムだけという淋しい現状で、このアルバムに収録された各曲を生み出した各アルバムのリリースが待たれるところだ。
その他デイヴィス・シスターズのアルバムはドイツのベア・ファミリーから2枚組のCDがリリースされている。

Here's The Answer
この作品をCDショップで見かける事は極めて少ないが、本作も間違いなくCDでリリースされている。
スキーター・デイヴィスといえばアンサー・ソング(・・・・・これは何と説明したらいいのか、要するにヒット曲への答えの歌とでも言おうか)としても知られていて、この作品はまさしくそれをタイトルにしたものだ。オリジナル歌とスキーターが歌ったものが対で収録されていて、その対比が面白い。
ジム・リーブス、ドン・ギブソン、エディ・アーノルドなどの歌が聞けるほか、ボーナス・トラックが4曲追加されている。
ボーナス・トラック以外の曲、つまりこのアルバムの事だが、これは1960年にリリースされた作品だ。
私達の年代は「LIVING STREO」のロゴに弱くて、これが付いていると何となく内容まで良いような気がしてしまうから不思議だ。


1995年
RCA 74321 29855 2
Skeeter Davis Sings Buddy Holly/Skeeter Sings Dolly
スキーターのアルバムはCDリリースされているものが少ないとはいえ、探してみると多少はあるようで、これもその中の1枚にして、かなり良い作品。
1967年に発表されたバディ・ホリーのカバー集と、1972年のドリー・パートンのカバー集を2in1にした有り難いコンピレーション。バディ・ホリーは多くの人がカバーしていて、個人的にはリンダ・ロンシュタットのものが好きだが、それは1枚のアルバムに1曲収録されているだけという程度で、他の多くのアーティストもそういう意味では似たようなものだ。
そこへいくと本作ではたっぷりとバディ・ホリー、そしてドリー・パートンのカバーを聞く事が出来る。時折ソリッドなギターの音が聞けるが、本作ではギターは期待しないで、スキーターの歌を楽しんで欲しい。
それにしても本作も先に紹介した「Here's The Answer」にしても店頭で見かける事は少ないのが残念で、本作を欲しいと仰る方は注文した方が早いかもしれない。
(2002年5月3日の追加情報)

1999年
Eagle Records EDL EAG 221-2