Rita Coolidge
Love Me Again

Side-A
1. You
2. Slow Dancer
3. Sweet Inspiration
4. Love Me Again
5. It Just Keeps You Dancing

Side-B
1. Bye Bye Love
2. The Jealous Kind
3. Hello Love, Goodbye
4. You're So Fine
5. Songbird
A&M AMP-6007
(LP 国内盤)


デビュー当初のリタはかなりブルージーな印象が強い歌手であった。
デラニー&ボニーへの参加や、後のジョー・コッカーのバンドへの参加などがその印象を一層強いものにしていたと思う。
実際に1971年にリリースされた彼女のデビュー作はそんな雰囲気が強いアルバムであったし、ジャケットに使われた写真があの時代とリタの音楽的方向性を表していたように思う。
しかし、時を経て人は変わるものだ。
1978年にリリースされた「ラブ・ミー・アゲイン」はかなりポップに寄った・・・というよりもポップそのものの味わいに仕上がった私のお気に入りアルバムだ。
リタとは親戚関係にあたるブッカー・T・ジョーンズはデビュー作から彼女のアルバムに付き合っているが、このアルバムではデヴィット・アンダーレと共にプロデュースを手掛けている。
デビュー・アルバムのデザインと本作を見比べてみると分かり易いが、本作の淡い色使いから得る印象そのものの内容が詰められたヴォーカル・アルバムの佳作であり、リタの代表作と言っても良い完成度だ。
聞いていると何故かしら元気を与えられるアルバムで、私自身非常に良く聞いたアルバムだ。
その音楽性故かヒット・チャートにはあまり縁がなかったリタだが、ポップ路線に転じた前作あたりからチャートに曲を送り込むようになり、本作からも「ユー」という歌がヒットした。
そして第8回東京音楽祭で「あなたしか見えない」がグランプリを獲得し、日本でも一躍その名を知られるようになった。
しかし「あなたしか見えない」はいかにもマーケットを意識した作品に聞こえ、個人的にはあまり好きになれなかった。

「ラブ・ミー・アゲイン」に話を戻すと、本作はギター好きな私にとってギターを聞くという意味でも価値の高い作品であるのだ。
もともとリタのアルバムには多くの有名ミュージシャンが参加していて、その演奏は非常に質の高いものだが本作でもその辺の路線は堅持されている。
ギタリストは“ジェイ・グレイドン”と現在はベンチャーズの“ジェリー・マギー”が参加しており、特にジェイ・グレイドンのリード・ギターが心地良い演奏を聞かせてくれる。
曲でいえばA-2の「スロー・ダンサー」はボズ・スキャッグスの名曲として有名な曲だが、このリタのテイクを聞いてからはリタ版の方が好きになってしまったのだ。
その理由はジェイ・グレイドンのギターに負う所が多い。
ジェイ・グレイドンのギターが絡んでくるこのテイクを聞いてからは、どうにもボズのテイクが耳に馴染まなくなってしまった。
それぐらいこのテイクで聞けるジェイ・グレイドンのギターはツボにハマった演奏で、この曲の雰囲気を一層盛り立てている名演奏だ。
一般に名曲というのはオリジナルがいちばん良くて、オリジナルに匹敵する程のカバーというのはなかなか存在しないというのがこの世界の常識でもあるが、本テイクは名曲と名演奏が見事に融合した優良カバーだ。
B-2の「ジェラス・カインド」も同様だ。
ジョー・コッカーも歌っていたし多くのアーティストにも取り上げられている名曲であるが、ここでもジェイ・グレイドンのギターが一際光った演奏だ。
イントロから間奏までタップリとジェイ・グレイドンのギターが堪能出来る。
他にも「スイート・インスピレーション」での心地良いカッティングなど、歌伴で聞けるギターもなかなか良い。
リタはこの作品の後にもポップ色の濃い「サティスファイド」(1979)を発表しているが、「ラブ・ミーアゲイン」のレベルには達していないと思う。
私にとってリタのベストは「ラブ・ミー・アゲイン」をおいて他にはないのだ。

1971年にリリースされたリタのデビュー・アルバム。
この頃は「ラブ・ミーアゲイン」のようなアルバムを出すとは想像も出来なかった。
「ラブ・ミーアゲイン」は大好きなアルバムに違いないが、本作も大好きである。
参加ミュージシャンの顔ぶれが凄い。
レオン・ラッセル、クラレンス・ホワイト、ジム・ケルトナー、マーク・ベノ、ステファン・スティルス、ドナルド・ダック・ダン、ボビー・ウーマック、ジェリー・マギーなどそうそうたるメンバーで、リタもバック陣の豪華さに臆す事なく歌っているのがサスガだ。
特に私が好きなのはA-2のマーク・ベノ作品である「Second Story Window」だ。第一に曲がよいのだが、今は亡きクラレンス・ホワイトが弾く乾いたギターの音色が秀逸で、目立たない作品ではあるがクラレンス・ホワイトが聞ける作品としても価値は大きい。
「ラブ・ミー・アゲイン」に続いて出された1979年の作品。
「ラブ・ミー〜」ではエヴァリー・ブラザースの「バイ・バイ・ラブ」をカバーしていたが、本作ではシフォンズのヒットでお馴染みの「ワン・ファイン・デイ」をカバーしている。
しかし私が思うにはリタの声質にこういう歌は今ひとつ合っていないように感じる。
リタがやるべきポップはこういうものではないと思うのだ。
「ワン・ファイン・デイ」のような明るいポップ・ソングのカバーはやはりカーペンターズが本領を発揮する。
第8回東京音楽祭で「あなたしか見えない」がグランプリを獲得し、リタとしては充実した時期に発表したアルバムだが、今ひとつ思惑が外れたような気がする。
聞いて損はないと思うが「ラブ・ミーアゲイン」のレベルには遠く及ばない作品だと思う。

1970年にニューヨークのフィルモア・イーストで録音されたジョー・コッカーのライブ盤。
どうもこの手の音楽は日本では人気が出ないが、いかにもアメリカ的で良い。
こういうバンドがツアーをして回れるという所にアメリカ音楽界の懐の深さがある。
例えばかつてのエルビン・ビショップ・バンドもそうだったし、ブルース・ブラザース然り、また日本での知名度は全くといっていいほどないがデルバート・マクリントンなんていうのも男っぽいアメリカ音楽をやっていて良いのだ。
話はこのアルバムに戻るが、ここにはあの大ヒット曲「スーパースター」が収められている。カーペンターズのヒットで有名になったが、ここで聞けるリタの歌もちょっと気怠い雰囲気で良い。
もともとリタの為に書かれた曲だけにバック・ステージ的な曲の内容はいかにもリタにぴったりだ。