1.吹奏楽の悦楽

どういうわけか昔からブラスが好きだ。どうもカントリー音楽が好きな人にはブラスが好きという人も多いようで、昔の話だがプロで活躍するペダル・スティールのプレイヤーとバンドを作ろうという話になり、それは弦楽器でマーチをやろうというコンセプトだった。
結局そのバンドは実現に至らなかったが、私の回りには他にもブラスが好きだというカントリー・ミュージック・ファンがいる。
カントリーとブラスには共通性があるのかもしれない。
ブラスと言ってもいろいろあって私が好きなのは誰でも耳にした事があるようなマーチだ。
パリ・ギャルドなんていう凄いのもあるがどうもわたしの好みとは少し違う。
私のマーチ原体験はたぶん東京オリンピックだったと思う。あの秋空のなかで(もちろんTV中継)聞いた数々のマーチは実に鮮烈に耳に残り、その時に録音した開会式の「ライブ録音テープ」は私の大事な宝物になった。
以来マーチが好きで色々なレコードを買ってきた。
だがマーチのレコードやCDを買うのは難しい。
当たり、ハズレが激しいのだ。
マーチというのは演奏だけ良くても面白くなくて、録音の良さが伴わなければ価値は半減してしまう。かといって録音だけ良くても演奏が良くなかったらこれもまた困ったものだ。
マーチというのはオーディオ的にも面白く、各楽器を如何に上手く再生出来るか、自分の機器のチェックにもなる。
本来なら良い装置を使って大音量で再生したいところだが、我が家の事情ではとても許されず、もっぱらゼンハイザーのヘッドフォンで楽しんでいる。しかし、マーチを聞くのにゼンハイザーというのはどうなのか?という疑問を持っているのも事実で、もうちょっとブラス再生に合ったヘッドフォン入手を目論んでいるところだ。
さて録音と演奏の良さが両立したものは私が所持しているものの中でもとても少ないのが残念だが、そんな中から強引にいくつかのアルバムを紹介してしまう。

マーチといってもいろいろあるが特に私が好きなのはアメリカのマーチで、その中でも
ジョン・フィリプ・スーザの作品がいちばん好きなのだ。スーザの作品は日本人にも馴
染みが深いはずで、曲を聞かせれば知っている人が最も多いキング・オブ・マーチだ。
このアルバムはスーザの作品を集めたマーチ集。
演奏しているのはポール・ラヴァール指揮のザ・バンド・オブ・アメリカというそれらしい
名前のバンドで、演奏も録音も良い。
個人的見解でマーチの良さを言わせてもらうと「美しいメロディを豪快に演奏する」とい
うのが最大の魅力で、このアルバムでスーザの曲の良さがタップリ味わえる。
中でも私が最も好きな「海を越えた握手」はここで聞ける演奏がいちばん良い。
このアルバムの唯一の難を言うと、曲間がスネアドラムの音で繋げられてしまってい
る事だ。
01.雷神  02.キング・
コットン  03.美中の美
04.ワシントン・ポスト
05.エル・キャピタン
06.忠誠  07.アメリカ野
砲隊マーチ  08.士官候補生  
09.海を越える握手  10.自由の鐘  
11.ニューヨーク・ヒポドローム
12.星条旗よ永遠なれ  
1974年にキングから発売されたオーディオ・チェック・シリーズの中の1枚。
監修を菅野沖彦氏がやっているオーディオ・マニア用のアルバムだが、鑑賞用として
もレベルの高いマーチ集だ。
オーディオ・チェック用という事でカッティングの時に一切リミッターなどを使用していな
いという事だ。
そういう事もあってマーチには必要不可欠なダイナミックレンジや周波数レンジの広さ
などを感じさせる素晴らしい録音だ。例えばシュアーのV15みたいに軽い指定針圧の
カートリッジだと針飛びを起こしてしまうのではないかと思わせる程に迫力のある音が
収められている。
B面の“ファンファーレ〜国民の象徴”でのもの凄いスーザホーンのソロや、“野砲隊
マーチ”での憎いまでのアレンジにはマーチの楽しさが凝縮されている。

01.ジョニーが凱旋する時
02.ハイ・ホー〜口笛吹いて
03.士官候補生  04.ワシントン・
ポスト 
05.ファンファーレ〜国民の象徴  
06.野砲隊マーチ  07.忠誠
08.エル・キャピタン
このアルバムは1968年に録音されたブラスとデキシーを融合させた楽しい
もので、現在はCDに復刻されている。
収録曲はいわゆる“行進曲”ばかりではなく、デキシーの古い曲なども織り込まれてい
る。オリジナル・タイトルが「When the Swing Comes Marching In」というだけあって、全
編を貫くスイング感に嬉しくなってしまう。ここに収録されている曲はすべてスイング・ア
レンジが施されており、マーチの別の楽しさを味わう事が出来る。色々な楽器が複雑に
交差して曲を構成していくのはアレンジャーとしてはいちばんの聞かせ所である筈で、そ
んな部分もこの作品の楽しさのひとつだ。
どの曲も良いが、特に「オリジナル・デキシー・ランド・ワン・ステップ」が好きで、体中が
熱くなるようなアレンジと演奏は全ジャンルを通じて私の最高のお気に入りだ。
超オススメ盤です。興味がある方は是非聞いてみて下さい。
01.士官候補生  02.ハイ・ソサエ
ティ  03.スワニー  04.自由の鐘  
05.センセーション・ラグ
06.星条旗よ永遠なれ  07.錨を上
げて  08.オリジナル・デキシーラ
ンド・ワン・ステップ
09.忠誠  10.サリーのクレオール・
トロンボーン
11.コペンハーゲン  12.当直士官
これは私が大好きなボストン・ポップスのアルバム。
ボストン・ポップスもよくマーチをやるが、ご存知のように彼らは吹奏楽団ではない。しかし
弦楽器が入ったマーチというのも音が優しくて良いものだ。そしてこのアルバムも決してマ
ーチ集という訳ではない。アルバムの内容はタイトルが示す通りで、アーサー・フィドラー指
揮の作品とジョン・ウィリアムス指揮の作品とが収められたコンピレーション盤だ。日本でボ
ストン・ポップスのコンサートがあると皆さん正装して出掛けるようだが、アメリカではもっと気
軽に聞けるようで、そちらの方がボストン・ポップスを聞く姿としては正しいような気がするの
だが・・・・・
収録曲はこれぞアメリカといった感じの作品が多く、「エンターティナー」や「アレキサンダー
ス・ラグタイム・バンド」など人気曲も多い。中でも「76トロンボーンズ」は私の大のお気に入
り。もっともボストン・ポップスらしい作品で、有名マーチ曲のエッセンスを取り入れた
構成はアメリカならではのものだ。
01 Fanfare for the Common Man
02 American Salute 03 America t
he Beautiful 04 This Land is Your
Land 05 Hoe-Down 06 Battle
Hymn of the Republic07 Prayer of
Thanksgiving 08 The Entertainer
09 Alexander's Ragtime Band
10 Strike Up the Band  11 76 Trombones
12 When the Saints Go Marchin' In
13 The Star and Stripes Forever
14 America, the Dream Goes On
15 Variations on America