カーペンターズ
ナウ・アンド・ゼン

01 Sing
02 This Masquerade
03 Heather
04 Jambalaya(On The Byyou)
05 I Can't Make Music
06 Yesterday Once More
07 Oldies Medley
  Fan Fan Fan/The End Of The World/Da Doo Ron Ron
  /Deadman's Curve/Johnny Angel/The Night Has A THousand Eyes/
  Our Day Will Come/One Fine Day
08 Yesterday Once More(Reprise)
1973年作品
ユニバーサル ミュージック
UICY-3014


カーペンターズは良質なカバーを数多く発表しているが、それが最も顕著に表れたのが1973年発表の本作。
このアルバムは彼らの通算5枚目に当たるが、1971年の「カーペンターズ」そして1972年の「ア・ソング・フォー・ユー」という2枚の密度濃い作品の後に生まれた傑作といって良いだろう。
この頃はカーペンターズのキャリアの上でも最も充実していた時期といえる。
このアルバムからは「シング」「ジャンバラヤ」「イエスタディ・ワンス・モア」という3曲のビッグヒットを送り出しているが、「マスカレード」のヒットは残念ながらジョージ・ベンソンに浚われてしまった。個人的な好みの差もあろうかと思うが、何度聞いてもこの曲はカーペンターズの方が良いと思うのは私だけだろうか。ジョージ・ベンソンのそれは正しく時代の要求に合った(マーケットが求めていた)演奏だったが、普遍的という意味ではカーペンターズが勝っていると思う。
同じように「見つめ合う恋」に収録の「微笑の泉」のヒットは、後にバリー・マニロウ(バリー・マニロウ版の邦題は「涙色の微笑み」だった。)に浚われていて、当時圧倒的な人気を誇ったカーペンターズでさえ、完全な勝者ではなかった訳だ。

さて本作の最も大きな魅力は“イエスタディ・ワンス・モア”から始まるオールディーズ・メドレーだろう。
ギタリストのトニー・ペルーソのDJを配したアレンジは当時のラジオ放送そのものを意識したのか、ライブ感覚充分で楽しい事この上ない。
「オリジナルに勝るカバー無し」というのは音楽の世界では半ば常識のようになっているが、その常識を最も多く打ち破ったのはカーペンターズだったと思う。
その最筆頭は「緑の地平線」に収録されている“プリーズ・ミスター・ポストマン”だと思うが、このメドレーで聞ける数々の曲も素晴らしいアレンジと演奏で、彼らの並々ならぬ才能を伺い知る事が出来る。
個人的に最も好きなのは「ジョニー・エンジェル」で、イントロ部コーラスが左から右にパンしていく部分などは何度聞いてもゾクゾクさせられるし、ストリングスのアレンジも美しくて申し分ない。
そして1962年のボヴィー・ビーのヒット「The Night Has A Thousand Eyes:燃ゆる瞳」も好きなテイクだ。もともとの楽曲が良いのはもちろんだが、卓越したアレンジと演奏は原曲の持つ魅力を一層引き出している。
“オリジナルに勝るカバー無し”と云われる理由のひとつに、良かれ悪しかれリスナーの耳にオリジナルの歌が刷り込まれているという事があると思う。
リチャードは「私達は真似をするような事はせずに、常にカーペンターズのオリジナルを目指した」というような主旨の発言をしているが、オリジナルの真似をしていないのに彼らの演奏がすんなりと耳に入ってくるのは、センスと力量の勝利という他ないだろう。
この名盤はカーペンターズ・ファンなら当然知っていると思うが、本当に意外な事にオールディーズ・ファンの人でも本作に収められた素晴らしいメドレーを知らない人がけっこういて、そういう人達にずいぶんこのアルバムの良さを吹聴してきた。
そしてもうひとつ驚くべきは録音の良さだ。
発表から30年を経た今日聞いてもまったく色褪せていないのはさすがという他なく、妥協を許さない仕事の素晴らしさを痛感させてくれる。
もはや新作の発表は望めないカーペンターズであるが、本作は私にとって元気になりたい時に聞く大切な1枚だ。

Mi-Ke
甦る60s  涙のバケーション
(1993)

カーペンターズのナウ&ゼンのオールディーズ・メドレーと似たようなコンセプトで作られたMi-Keのアルバム。もちろんあらゆる面でカーペンターズ作品に及ぶ部分はないが、これはこれで楽しめる。
振り返ってみればMi-Keというグループは変則的な活動をしたと思う。
リリースされたアルバムはすべてカバー集という徹底ぶりであったが、それを歌っていた当の本人達はどう思っていたのか一度聞いてみたい気がする。
各アルバムに最低1曲は収められていたオリジナルは、本作品に収録の「涙のバケーション」とGSカバー集に収められていた「想い出の九十九里浜」がポップな香りが漂う佳曲で双璧の出来だと思う。
皮肉な話だがこれを聞くと改めてカーペンターズの凄さや、徹底した仕事ぶりを感じる事が出来る。

ボビー・ヴィー
「Sings The New Sound From England!/Live! On Tour」
(2002)

こちらは2002年にリリースされた2in1のコンピ盤。
1964年に発表された「Sings The New Sound From England」と1965年発表の「Live On Tour!」がカップリングされている。
目玉は1965年のライブ盤。・・・・・・と云いたい所だが、これは本当のライブではなくあの頃流行った疑似ライブというヤツ。何故こんな面倒な事をしたのかと思うが、何となくライブっぽい出来でそれなりに楽しむ事は出来る。
ナウ&ゼンに収録の「The Night Has A Thousand Eyes・燃ゆる瞳」が聞けるし、さらに上記のMi-Keのアルバムにも収録されている「Take Good Care Of My Baby・サヨナラ・ベイビー」が聞けるのも嬉しい。