Nokie Edwards & The Light Crust Doughboys
With Tom Brumley on Steel Guitar

Adventure In Country Swing

01 I'm Walkin'
02 Welcome To My World
03 Tumbling Tumbleweeds
04 I Love You Because
05 Beer Barrel Polka
06 Amarillo By Morning
07 Lonesome Town
08 Faded Love
09 Panhandle Rag
10 A Fool Such As I
11 Fravlein
12 Your Cheatin' Heart
13 Orange Blossom Specia
l
Art Greenhaw Records
AG2007
2000年リリース

遂にノーキーがやってくれた。
正直に言えば私は決してノーキーの信奉者ではない。
しかし、私に初めてエレキ・ギターの格好良さや面白さを教えてくれたのは間違いなくノーキーだったワケで、私もベンチャーズが日本で人気が出た頃には少し年上の人達に混じって分かったような顔をして聞いていたものだ。
それから何年かの年月が過ぎた頃、ある友人からベンチャーズの4枚目のアルバム「カラフル・ベンチャーズ」(61年10月)を借りて、ある種の衝撃を受けた。
それまで私が知っていたベンチャーズとあまりに違うので面食らったのだ。
当時の私は他の人々と同じように、ヒット・チャートを賑わしていたような曲が好きだったので、知らない収録曲が多い「カラフル〜」にはすぐに馴染めなかったのだと思う。
それにギターの音も歪みの多いモズライト録音とはずいぶん違い、クリアーなフェンダーの音は当時の私には迫力がないと感じたように記憶している。
後に時代は変わり私も様々な音楽を聞くようになり、いろいろな素晴らしいギタリストがいる事を知るに至ったのだが、そうしているうちに何故か初期のベンチャーズに強く心惹かれるようになっていった。
何故そういう事になったのか自分では良く分からないのだが、ギブソンよりもフェンダーの音が好きで、フェンダーのギターの音がストレートに出ている初期作品に惹かれたのかもしれないし、カントリー・ミュージックに興味を覚えたというのも一因になったと思う。
そんなワケで初期ドルトンやリバティの「フェンダー・ベンチャーズ」は今でも良く聞く。
しかし多くの反論を覚悟して言えば、「ノック・ミー・アウト」以降のベンチャーズは殊更に面白くない。
それでも気になるものだから話題になるレコードやCDがあれば聞いてみたりしても、いつも期待を裏切られるばかりだった。
実はウェブ版には載せていないのだが、私が発行している冊子版の「Guitar Fan Vol.1」では、2000年1月13日の東京・六本木のライブ・ハウス「スイート・ベイジル」で行われたベンチャーズ(ギターはノーキー)ライブ・リポートを載せていて、メチャクチャにこき下ろしたのだ。
人それぞれに好みもあるから一概には云えないが、単調にかつてのヒット・ナンバーを並べただけの選曲は面白みがなかったし、ノーキーのギターもひどく精彩を欠いたものに聞こえた。
しかしながら、カントリーっぽいナンバーをやった時だけは別で、かなり聞き応えのあるプレイを聞かせてくれたのだ。
同じ年の8月に東京・中野サンプラザで開催された「永遠のギター・キッズVol.3」に出演したノーキーも同じような感じで、私が身を乗り出して聞いたのは「アイ・ゴット・ア・ウーマン」だけであった。
「やはりカントリー系のナンバーをやった時のノーキーは良いな」という思いを胸に帰路についた事を記憶している。
そうなのだ。
やはりノーキーにはカントリーなのだ。
日本で行うライブではいつも「10番街の殺人」やら「パイプライン」やら「アパッチ」などのヒット曲を中心に演奏していたように思うのだが、それはそういう需要があるから仕方の無いこと、と思いつつもノーキーの力量が発揮されたギターを聞きたいと思っていたのだ。
そして、やっと発売されたのが本作である。
タイトルが良い。
「Adventure In Country Swing」とは泣かせるではないか。
これでこそ長く待った甲斐があるというものだ。
ベンチャーズには1963年に「Play The Country Classics」というアルバムがあるのだが、今回のアルバムはベンチャーズ名義ではないという事と、何といってもあれから約40年という歳月を経て録音されたという事で、かなり趣の違う作品に仕上がっている。
若さにまかせたテクニカルなノーキーを聞きたいなら「Country Classics〜」の方が良いのかもしれないが、今回の「Adventure〜」には40年の年輪を刻んだからこそ成し得るノーキーの現在の姿が克明に記録されている気がする。
ベンチャーズ・ナンバーをやっているノーキーよりも、本作で聞かせる音の方が40年の歳月を重ねた一人のギタリストの結果としては適当というか、「ああ、やはりこうなったのか」というような当然の結果といえるような気がしてならない。
ペダル・スティールのトム・ブラムリーの参加も見逃せない。
トム・ブラムリーはかつてバック・オウエンス率いるバッカルースに在籍していた実力者で、後にはデザート・ローズ・バンドでも活躍し、更には自主制作っぽい感じのソロ・アルバムまでリリースしている。
1950年代後期にバック・オウエンスのバックをやっていたというノーキーと、1960年代にバッカルースで活躍したトム・ブラムリーにその当時何らかの接点があったのかどうか良く分からないが、あったとしても不思議な事ではなく、本作は同窓生の共演という事になる。
収録曲はジム・リーブスの1962年の大ヒットで、プレスリーもカバーしている名曲「Welcome To My World」や「Beer Barel Polka」、「Lonesome Town」、「Fool Such As I」、「Your Cheatin' Heart」などお馴染みの曲が多い。
またトム・ブラムリーのペダル・スティールをフューチャーしたメロディの大変美しい「I Love You Because」や、ペダル・スティールのスタンダード・ナンバーと云ってもいい「Panhandle Rag」など、スティールの聞かせ所もちゃんとある。
先に紹介した「Play The Contry Classics」と唯一曲がダブっている「Panhandle Rag」を聞き比べて見るのも一興だろう。
本作でのノーキーはアコースティック・ギターの使用が目立つが、良くある稚拙な「アンプラグドもの」と違ってノーキーらしさが健在だし、とにかく良い音で録音されているのが嬉しい。
さらにノーキーのギター・プレイに於いて特筆せねばならないアレンジの妙も健在で、キャッチなメロディの曲をさらに聞き易いギター・ミュージックに仕上げている。
本作が熱狂的なノーキー・フリークスにどう受け入れられるか未知だが、こういうノーキーを待っていた私のような人間もいる筈で、本来の姿?に戻ったノーキーの今後をもう少し見てみたい。