ナッシュビル・スターズ・オン・ツアー
〜ジム・リーブス、チェット・アトキンス、ボビー・ベア、アニタ・カー・シンガース〜
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Side-A 01 Night Train to Memphis 02 500Miles 03 Georgia on My Mind 04 Shame on Me 05 Java 06 Detroit City Side-B 01 Wellcome to My World 02 Oh Lonesome Me 03 Wildwood Flower 04 Four Walls 05 He'll Have to Go 06 Greensleeves-Street of Laredo |
Side-A: 1,2,3&Side-B: 2,4,5 Anita Kerr
Singers Side-A: 2,4,6 Bobby Bare Side-B: 1,4,5 Jim Reeves Side-A: 5, & Side-B:3,6 Chet Atkins |
1969年 RCA CAMDEN |
チェットが本人名義のアルバム以外に顔を出しているケースは多いが、この作品もその中のひとつで1969年にリリースされたライブ盤だ。
チェットのライブ盤は正式にリリースされているものがあるが、それはチェットのキャリアからいうとかなり後期の方に当たり、若い時代のライブ音源というのは残念ながら非常に少ないというのが現実だ。
本作品がリリースされた1969年には6枚ほどのアルバムをリリースしているが、今になって他の時期の作品と比較してみるとあんまり目立った作品は残していないように感じられる。
しかしチェットの全体的なキャリアから考えればまだまだ勢いがある演奏をしていた時期で、ここに残されたライブ音源はそういう時期のナマ音を聞けるものとして貴重である。
チェットの演奏曲は3曲で、A-5「Java」、B-3「Wildwood
Flower」、そしてB-6「Greensleeves〜Street
of Laredo」である。
数少ないチェットのライブ音源という事ではどれも貴重だが、特にA-5の「Java」は貴重なのではないか。
この曲はアル・ハートの60年代のヒットとして知られていて、邦題では「ジャワの夜は更けて」という何とも垢抜けないタイトルに変じられたが、曲は面白い。
ここでのチェットは曲のアタマで「チェットもメタルに転向か?」と思わせるようなハードな音を出しているが、これはちょっとしたコントロール・ミスだろう。チェット自身が「エレキ・ギターはコントロールが難しい」と語っているが、この曲のアタマの部分などはチェットが語る言葉そのものが現れてしまったのかもしれない。
しかしやはりナマで聞けるこの曲はスタジオ盤よりも音楽が生きているという感じを受ける。
バックのフルバンドとの息もピッタリで楽しいチェットのステージが目に浮かぶようだ。
B面に収録された2曲はチェット・ファンにはお馴染みの曲で今更語る必要はないだろう。
チェットのライブ音源が聞けるというのは私達にとってこのアルバムの大きな魅力だが、私にとっては他のアーティストのライブもかなり貴重だ。
特にチェット・ファミリーと言ってしまっても決して過言ではないアニタ・カー・シンガーズのライブが聞けるというのは、私にとってこの上ない喜びなのだ。
アニタ・カー・シンガースはどちらかと言えば「静」の印象が強いが、ここで聞ける彼らの歌は珍しく「動」の印象が強い。
A-1の「Night Train to Memphis」での躍動感は彼らの印象を変えるものだ。
フルバンドのリズミックな演奏に乗って歌われるこういう歌は私の“大好物?”で、アルバム、或いはライブのオープニング・ナンバーとしては最適なナンバーだ。
A-3「Georgia on My Mind」も良い。カントリー・オールスターのステージとは思えないジャズっぽい雰囲気であるが、「Night
Train〜」に続いてフル・バンドのサポートを得た歌はゴージャスなムードが漂う。
「Oh Lonesome Me」も同様に素晴らしい。
この曲は非常に人気が高く、カントリー系シンガー達の御用達のようになっていて、ロギンス&メッシーナやナンシー・シナトラまでもが取り上げているが、ここでの演奏もドライブ感があって良い。
もう一つ個人的な思い入れを書いてしまう。
B-1「Wellcome to My World」も私が大好きな曲だ。
もともと私はこの曲をプレスリーの歌で知ったので、ジェームス・バートンの印象的なギターが聞けないジムのオリジナルは今ひとつしっくりこないのだが、名曲である事に違いはない。
メロディが良いのはもちろんだがレイ・ウインカーの詩がまた良いのだ。
チャンスがあればプレスリーの歌も聞いてみて欲しい。
この作品はチェットのライブが聞けるという大きな魅力と共に、他のアーティストのライブ音源もなかなか珍しいものだと思う。
残念な事にこのアルバムが何処で録音されたのか、細かなデータはジャケットに記載されていないのだが、上記の私が書いた文中でフル・バンドと書いたのは実は“ウェルナー・ミューラー楽団”の事で、そういう事から察するともしかしたらヨーロッパ、その中でもカントリー人気が高かったドイツで録音されたという可能性は高いのではないかと思う。
もし詳しい事を御存知の方がいたら是非教えて頂きたいと思う。
こういった作品がCD化される見通しは極めて低いというのが実状だと思うが、ベア・ファミリーあたりに頑張ってもらいたいものである。