ナンシー・シナトラ
カントリー・マイ・ウェイ

01 It's Such A Pretty World Today
02 Get While The Gettin's Good
03 Walk Through This World With Me
04 Jackson
05 When It's Over
06 Lay Some Happines On Me
07 Lonely Again
08 By The Way ( I Still Love You)
09 Oh Lonesome Me
10 End Of The World
11 Help Stamp Out Loneliness
12 Highway Song
13 Hello L.A, Bye Bye Birmingham
14 Are You Growing Tired Of My Love?
SUNDAZED
SC 6056
1996
Originaliy issued in 1967


※12〜14:Bonus Tracks


ナンシー・シナトラが1967年に発表したカントリー・アルバム。
この作品が発売された頃は日本ではまだグループ・サウンズが全盛の時代で、私自身まだカントリー・ミュージックには興味を持っていなくて、従ってこのアルバムの存在自体知るはずもなかった。
しかしその後、1970年代中頃になってカントリー好きの友人からこのアルバムの収録曲の1部を録音してもらい、すっかり気に入った私はレコード店を探し回った。
当時上野にあって輸入盤の在庫が豊富だった某レコード店の片隅にはナンシー・シナトラのコーナーがあり、そこにはずいぶんたくさんのアルバムがあったような気がするのだが、残念ながらお目当てのカントリー・アルバムは遂に見付からなかった。
蛇足ながらこの某レコード店にはずいぶん通った。
当時上野から程近い場所に勤めていたので何かと秋葉原や上野には立ち寄る事が多くて、今から思えば私が熱心にレコードなどを集めるようになった原点のような気がする。
上野のこのレコード店の近くにはウエイトレスのユニホームがチャイナドレスという嬉しい喫茶店があり、珍しいレコードをゲットした後には必ずこの店に立ち寄ってチャイナドレスの女の子を眺めつつ音楽談義に花を咲かせたものだった。
懐かしい思い出である。

ずいぶん話が横道にそれてしまったが、ナンシーのこのアルバムは1996年にボーナストラックを3曲追加してCD化され、やっと入手する事ができた。
このアルバムを探し始めてから20余年という長い年月を経た後に、念願叶って入手する事ができた私にとっては大切な1枚だ。
アメリカのポップシンガーは自分のキャリアの中でクリスマス・アルバムを製作することはひとつのステイタスのような部分があるようだが、カントリー・アルバムを作ることも結構あるようだ。
調べてみるとどうしてもカントリーとは結びつかないような歌手までカントリー・アルバムを作っている事があり、驚かされたり嬉しかったりする。
私は元々歌手やギタリストが自分の専門分野以外の音楽をやるのが好きで、例えばポピュラー歌手がジャズやカントリーに挑戦したり、ジャズギタリストがカントリーやポップミュージックに挑戦してみたりするのが好きなのだ。
中にはすごい失敗作と思われるような出来の作品もあるが、逆に本来の音楽にはない新しい解釈を見せてくれる場合もあり、それはそれでなかなか楽しいのだ。
ナンシーのこの作品も全盛期に作られたという事もあって、なかなか楽しい作品に仕上がっている。
それともうひとつ私にとっては非常に大切な事なのだが、どんなバック・ミュージシャンが参加しているのかという事もこういう類のアルバムを聞くときには大きな楽しみになる。
この作品に参加しているのはペダル・スティールにバディ・エモンズ、ギターにビリー・ストレンジ、リズム・ギターにウエィン・モスとチップ・ヤング、ハーモニカにチャーリー・マッコイなどなかなかすごい人達が参加しているのだ。
ギターに関しては歌伴に徹しているので大きな聞かせ所はないが、嬉しい事にバディ・エモンズのカントリー・ライクなペダル・スティールが随所で聞けるというアルバムなのだ。
今日ではジャズの方向にシフトしてしまったバディの方が人気が高い様子だが、私としてはこういうカントリーに寄った演奏が嬉しい。
中でもスロー・ナンバーの「ロンリー・アゲイン」や「ホエン・イッツ・オーバー」で聞ける流れるようなスティールは、今盛んに掘り起こされているバディのライブ音源などではなかなか聞けないものだし、賛否両論ある「オー・ロンサム・ミー」での印象的なプレイなど、バディ・エモンズを聞く上でもなかなか面白いアルバムだと言える。
歌の方は良くも悪くもナンシー節で、決して歌唱力に秀でているワケではないのだが妙に魅力があるのだ。
例えば「エンド・オブ・ザ・ワールド」は“この世の果てまで”という邦題を付けられて日本でも人気が高い曲だが、ナンシーの歌声には独特のものがあって、スキーター・デイヴィスやカーペンターズのものと比べてみるのも面白い。
これはまったく私の個人的推測だが、カーペンターズの「エンド・オブ・ザ・ワールド」はナンシーのものを参考にしたのではないかという気がしている。
このアルバムではナンシーの有名な持ち歌はあまり歌われていないが、ベスト・アルバム的な作品が多い彼女の作品の中で、ハッキリとしたコンセプトを持ったアルバムとして評価しても良いと思うし、未経験者?にはこういうナンシーも聞いて欲しいと思う。
繰り返しになるがナンシー・ファンばかりでなくバディ・エモンズ・ファンにも是非聞いて欲しい作品だ。