Merle Travis & Joe Maphis

Side-A
01. Corrine Corrina
02 Big Midnight Special
03 Don't Let Your Deal Go Down
04 Bayou Baby
05 Blast Off
Side-B
01 When It's Time For The Whippoorwill To Sing
02 Picture On The Wall
03 Mainstreet Breakdown
04 Kentucky Waltz
05 Gonna Lay Down My Old Guitar
Capitol SM-2102

ここ何年かの間に思いも寄らぬところから再び注目を集めたギャロッピング・ギターの元祖、マール・トラヴィスと早弾きギタリスト、ジョー・メイフィスのアルバムであるが、正直に言うと発売年がはっきり分からない。
実は私が所有しているアルバムはリ・イシュー盤で、これはオリジナル盤よりも曲数が少なくなっており、全収録曲数は10曲になっている。
当時のこの類のアルバムの収録曲数はだいたい12曲前後であるから、多く見積もっても2〜3曲がオリジナル盤から割愛されたと考えるのが妥当だろう。
だが私がこのアルバムを入手したのは1975年前後で、この時期には既にリ・イシュー盤だけが市場に出回っていたようだ。
事実私の周囲ではオリジナル盤を所有している人はいなくて、みんな一様にリ・イシュー盤しか持っていないのだ。
オリジナル盤でないという事は非常に残念ではあるし、他の収録曲も是非聞いてみたいが、それはこの作品がCD化されれば叶うと思っているのだが・・・・・
収録曲数が少ないとはいえ、それでもこの作品の良さは充分に伝わってくる。
更に注目すべきはライナーをチェット・アトキンスが書いている事だ。
私の英語力で理解した事をここに書くのは控えるが、一読の価値はある。

さて、アルバムの内容だが二人の熱いギター・バトルが楽しめるカントリー・ギター・ファン必聴のアルバムである。
晩年のマール・トラヴィスしか知らない人はマールを過小評価しがちだが、これを聞けば一発でマールの功績を理解できるだろう。
アルバムはマールのオリジナル「Corrine Corrina」から始まるが、軽快な二人のギターからスタジオの楽しい雰囲気が伝わってくるようだ。
個人的に言うとジョー・メイフィスのプレイというのは、ブルー・グラスに通じる部分が多くて今ひとつ好きになりきれないのだが、本作で聞けるプレイではそういう部分があまり気にならず、それはマールとの共演による副音と言えるだろ。
A-3の「Don't Let Your Deal Go Down」、A-5の「Blast Off」、B-1の「When It's Time For The Whippoorwill To Sing」などで目まぐるしいまでのギター・バトルが聞け、チェット・アトキンス作品のB-3「Mainstreet Breakdown」ではチェットとは違う魅力のギターが聞ける。
またA-3の「Bayou Baby」ではハーモニックスを巧みに使った美しいワルツを聞かせ、そしてB-2の「Picture On The Wall」での美しさも聞き逃せない。
随所で聞けるマールのギャロッピング・スタイルもこの作品の聞き所で、ジョーのギター・スタイルと好対照の魅力がこのアルバムの完成度を高めているように思う。
マールが使っているギターはキャピトルでのレコーディングに多用したと自ら語っているギブソン・スーパー400のスペシャル・モデルと思われる。ジョーの使用ギターについてはチェットがライナーで語っており、ジョーのギターとして多くの人の印象に残っているに違いないあのダブル・ネックのスペシャル・モデルだ。
どちらもストレートな音色が美しく、あの頃のギター・ミュージックは健全であったと思う。
昨今のギター・アルバムはテクニック至上主義みたいになって、音楽的な楽しさを見失った感が強いが、この作品はギター・ミュージックの楽しさと音楽の楽しさが両立しているので聞いていて楽しい。これが音楽というものだと思う。
このサイトの他のところでも書いているが、この時期のキャピトルはこういうギター演奏の宝庫で、未だCD化もされずに埋没している音源が無数にある。
私が大金持ちだったらこれらの音源を買い取ってCD化したいところだが、今の所こういう音源発掘に熱心なドイツのベア・ファミリーだけが頼みの綱だ。

Hank Thompson At The Golden Nugget
こちらはウエスタン・スイングの第一人者として名高いハンク・トンプソンのライブ。
この作品でマール・トラヴィス若き日のプレイが聞ける。もとより歌伴だからギター・ソロがタップリ聞けるというワケではないが、数少ないマールのライブ音源という意味ではなかなか貴重だ。
録音されたのは1961年だから1917年生まれのマールは40代半ばというミュージシャンとして脂の乗りきった年齢だったといえ、「John Henry」などで元気なギターを聞かせてくれる。
そしてマールのオリジナル、「Nine Pound Hammer」、マールも作者の一人として名を連ねているカントリー・インストのスタンダード、「Steel Guitar Rag」も収録されてます。
実は私はこのハンク・トンプソンが好きで、この作品も聞く機会が多いのです。なかなか良いですよ。CDで入手可能。