三根信宏スーパーライブ
       2002年11月17日
〜東京・錦糸町「サーティエイト」〜


元シャープ・ファイブのギタリスト、三根信宏のスーパー・ライブに行って来た。
11月17日、場所は三根さんファンにはお馴染みの錦糸町のライブハウス「サーティエイト」だ。
前回この場所で三根氏のライブが行われたのは2000年の3月であった。あれはいつの事だったか一度企画されながらも何故か中止になったという事もあり、私達ファンにとっては待ち望んだライブであったのだ。
私はこの場所での三根氏のライブは今回で3回目になるが、ライブハウスという狭い空間のせいか音が間近で聞ける事や雰囲気の暖かさが気に入っている。
やはりお気に入りのアーティストは大きなホールなどで見るよりもライブハウスなどのような場所がいちばん良い。

さて当日は多くのファンが駆け付けて店側のスタッフが混乱したのか、入場がスムースに行われずに私達は1時間近く待たされ、結果として開演が30分も遅れてしまったのだ。
まあしかしそんな開演前の混乱など忘れてしまうほど2回のステージは素晴らしかった。
それにしてもたくさんのお客が入っている。
申し訳ない事に私は普段のこの店に行った事がないのでよく分からないが、おそらくこの日のように満員で立錐の余地もないという程の混雑にはなっていないと思う。
毎度の事だがこの夜も超満員のファンで会場は熱気ムンムンでファンの期待の程が窺える。
今回のライブはシャープ・ファイブ名義ではなく「サウンド・ウエポン」というバンド名を名乗ってのステージであった。
しかし、ベースにはかつてシャープ・ファイブで共に仕事をした伊藤昌明氏も参加するなど、三根氏も旧知の仲間を得てリラックスしているように見えた。
この夜演奏された曲は三根氏のファンにはお馴染みの曲が多かったが、選曲の幅広さはそのまま三根氏の音楽的なバックグラウンドの広さを示しているようだ。
過去のこのステージでやった曲もあるし、三根ファンには馴染みの深い曲も当然多い。
しかし、それらの馴染みが深い曲をやっても決して今までと同じではなく、アレンジを変えているので新鮮な感覚で楽しむ事が出来るのだ。
聞き馴染んだ曲のアレンジを変えられると違和感を伴う事も多々あるものだが、今回聞いたアレンジはどれも素晴らしく、少なくても私は充分楽しむ事が出来た。
思うにこれは私が三根氏のギター・プレイばかりではなく、音楽性も併せて好きになっている証だと思うのだ。
そのせいなのか三根氏の選曲も私の好みに合うものが多い。
先に発売されたCD「That's Guitar 三根信宏」にも収録され、この夜にも演奏されたディズニーのアニメ「ピノキオ」に収録されていた名曲「星に願いを」や、ナット・キング・コールの名唱でしられる「モナリザ」(これはこの夜演奏されなかったが)などが然りで、メロディの美しい曲が多いのだ。
最近ステージで演奏されたりCDに収められたりするのはこういうメロディのきれいなゆっくりめのテンポの曲が多いような気がする。

特にこの日のライブで特筆すべきは1回目のステージに特別ゲストが出演した事だ。
昔、三根氏と一緒にやっていた事があるという歌手の田辺靖雄氏が歌を歌ったのだ。
田辺氏が歌ったのは「ルート66」、「ラブ・ミー・テンダー」、「ヘイ・ポーラ」(但しサワリの部分だけ)、「ムーン・リバー」の3曲半?であったが、これはかなり良かった。
やはりこういう歌を歌えるようになるのは経験が大事なのではないか。残念ながら昔の田辺氏のナマのステージを見た事がないので比較は出来ないが、この夜の歌声には会場を埋めたオーディエンスは大満足の筈だ。
「ルート66」はちょっとスイングっぽいアプローチが聞けて最高のノリだったし、「ムーン・リバー」や「ラブ・ミー・テンダー」などではカッコイイギターが聞けてゴキゲンだった。 
「ムーン・リバー」は作曲者のヘンリー・マンシーニが映画の中でこの歌を歌うオードリー・ヘップバーンの狭い声域を識して1オクターブの中で書き上げたという事だが、こういう歌というのは表現が難しいのではないだろうか。
私は専門家ではないのでよく分からないが、一見(一聴か?)してシンプルなメロディーに聞こえる歌を上手く歌うのはすごく難しそうに思える。
「ヘイ・ポーラ」での田辺氏の歌の出だしには体が震える思いがした。この曲は三根氏が女性部の歌を殆ど冗談という感じで歌ってお客を湧かせたのだが、イントロ部で聞かせた田辺氏のハスキーな歌声には感動すら覚えた。
これが積み重ねてきた重みというものなのかもしれないと思ったのだ。
この二人の共演では田辺氏の歌はもちろん良かったのだが、こういう歌判をやった時の三根氏のギターがまた素晴らしく、インスト曲と違う一面を聞く事が出来てファンとしては嬉しいのだ。

何はともあれ現在の日本の音楽シーンで、ポップでありながら非常にテクニカルなギターを聞かせてくれるのは三根信宏以外にはいないだろう。
昔の若さにまかせた感じの三根ギターも大好きだったが、円熟味を増した今はもっと良くて、出来る事ならもっと頻回にライブを聞きたいものだと思う。
アメリカではチェット・アトキンスやレス・ポールがかなりの高齢までライブを続けていたのを羨ましく思っていたが、日本でも大人が聞けるエレキ・ギター・サウンドが根付いてきたという感じがして今後が楽しみだ。

余談だが三根氏のライブはビデオ録画、写真、録音すべてOKという寛大さで、私もしっかりとMDに2回分のステージを録音してきた。
この2回分のライブ録音は私にとって宝モノになるのはもちろんの事、しばらくは聞き続ける事になるだろうし、会場を後にするときほんの少し三根さんとお話をし、その時に三根さん自身から頂いたピックも大事なお宝になった。