Chet Atkins
ME AND MY GUITARS

Russ Cochran著
世界限定 1200部


2001年夏。
私達の元に悲報がもたらされた。
2001年6月30日、チェット・アトキンスはテネシー州ナッシュビルの自宅で亡くなった。
死因はガンによる合併症だという。
チェットの病気の事は彼のファンなら知っていただろうし、それはある程度予期していた事ではあったが、実際に直面してみると何とも云えない無力感に襲われた。
私自身、身内でもない一人のギタリストの死にこんなに心を動かされるとは思ってもみなかった事で、初めて体験する不思議な気分を味わったものだ。
今から思えばチェットはまるで自分の死期を知っていたかのようだった。
90年代に出されたいくつかのCDにもそんな雰囲気を感じられるものがあるし、ラスト作となったトミー・エマニュエルとの「The Day Finger Pickers〜」にしても、自分は控え目にトミーに華を持たせていかにもトミーに後を託したような感じのアルバムであった。
90年代になってから自分の仕事を整理し始めて最後に後を託すのに最も相応しいと選んだ男、トミーとの仕事を最後に自分で幕を引いたいかにも生真面目なチェットらしいエピローグだった。
そして私達にいくつかのプレゼントを残していってくれた。
そのひとつはかつて自身でダメを出しておいて、死の直前にOKを出した「レア・パフォーマンス1976−1995」のビデオであり、もうひとつは文字通りチェットとそのギター達を紹介した限定本だ。
この本は約180ページにわたりチェットの軌跡と、チェットに使われたギター達の写真、そしてその説明が細かく解説されているマニア必携の本だ。
まず装丁が美しく豪華だ。
ハードなブックカバーに金で箔押しされたタイトル文字、そして写真は何と印刷ではなく1枚1枚丁寧にホントの写真が貼られたものだ。
そしてシリアルナンバーとチェットのサイン(これはスタンプだが)が入っていて、上の写真で見られるように私が入手したのは1154番だったから、ぎりぎりセーフという危ないところだった。
ブツ撮りでは全米ナンバーワンといわれるカメラマンを起用したその写真は美しく、まるでギターがひとつの芸術品であるかのような雰囲気を醸し出していてタメ息ものだ。
チェットが初めて手にしたというアコースティック・ギターから死の間際まで使い続けたギターまで、チェットのキャリアを彩った数々のギターをこの本で見る事が出来る。主を失った今はもう弾かれる事がないギター達が何となく淋しげに見えるのは私だけだろうか。
テキストも豊富で内容も豊かだが、英語読解力に難がある私のアタマでは読むのに難儀するものの、少しずつ読み進めた内容には興味深いものがある。
中でもこのサイトの「Play Backhome Hymns」のところでチェットと何某らの関係があるのではないかと私が推測した、ジャズ・ギタリストのジョニー・スミスとの交友の事など「やっぱりそうだったのか」と、大いに納得させられると同時に私の耳は間違っていなかったのだと嬉しい気分にさせてくれた。
まだまだ殆ど内容には目を通していないので多くの事は語れないが、この本が私にとって一生の宝物になるのは間違いない。
私が入手したのは今年の初めであり、その時の番号が上記に示した通りで、3月の初め頃には1180番位になっていたのを私は確認している。
今でもこの本が入手可能かどうか分からないが、間違いなくコレクターズ・アイテムに成り得るものだ。
因みにこの本の著者であるラス・コクラン氏のインタビュー記事がシンコー・ミュージック・ムックのアコースティック・ギター・ブック14に掲載されているので興味ある方は参照されると良い。