バリー・マニロウ・ライブ

01 Introduction;Could It Be Magic?
02 Somewhere In The Night
03 Tryin' To Get The Feeling
04 Can't Smile Without You
05 Bandstand Boogie
06 Mandy
07 Even Now
08 Daybreak
09 Flight Of The Bumblebee
10 All The Time
11 New York City Rhythm
12 Every Single Day
13 I Am Your Child
14 This One's For You
15 Sinatra Overture
16 Chicago(My Kind Of Town)
17 That's Life
18 When October Goes
19 Weekend In New England
20 Copacabana
21 I Made It Through The Rain
22 One Voice/I Write The Song
23 Stars In The Night
24 Could It Be Magic



日本コロムビア
COBY-70059
収録時間:115分
ドルビー・デジタル/ステレオ
DTS/5.1chサラウンド

2000年、アメリカ作品



ギターが聞けるワケではないけれど、音楽エンターティナーの素晴らしさを体感できるソフト!
どうも日本では今ひとつ人気が盛り上がらないバリー・マニロウだが、彼の作曲能力は素晴らしくて、リリースしてるアルバムも佳作が多い。
ビートルズの出現以降ポピュラーミュージック・シーンではバンド・サウンドがもてはやされて、ロック・バンドは当然の事としてソロ・シンガーもコンボ・バンドを従えてのショーというのが当たり前になってしまった感が強い。バンド好きな私としてはそういう形態も好きなのだが、ビッグ・バンドやフル・バンドを従えてのショーは別格の楽しさと贅沢さがある。
このDVDではマニロウがフル・バンドを従えて彼の代表的なナンバーをゴージャスに歌い上げるのが最大の聞き所で、本場の音楽の楽しさとエンターテイメントの何たるかを教えてくれる教材でもある。
そしてもうひとつ注目したいのはマニロウがバックのミュージシャンに対して非常に気を遣っているというか、謙虚である事だ。
この作品には収録されていないがマニロウには「スタジオ・ミュージシャン」というバック・ステージ的な雰囲気を持つ名曲があり、どうもこのバリー・マニロウという人はシンガーでありながら相当にミュージシャンに寄った生き方をしているようだ。
この作品の中でもバックのミュージシャンを褒め称えてるし、MCの中では面白い事を言っているので概要を引用しよう。
「もし今日このステージを見てくれた人の子供が音楽をやりたいと言ったら、是非やらせて欲しい。そしてチャンスを与えてやって欲しい。そうすれば今このステージにいる人達のように素晴らしいミュージシャンになれるかもしれないから」・・・・なんて事を言っているのである。
素晴らしいではないか。
私は未だかつてシンガーからこんな言葉を聞いた事がない。
これはマニロウの人柄と音楽性を見事に表した言葉ではないだろうか。
その言葉を裏付けるようにこのステージでは計算され尽くしたプロのステージが窺えて非常に心地良いのだ。

4曲目の「Can't Smile Without You」ではファンの女性をステージに上げて一緒にデュエットするのだが、マニロウに抱きかかえられるようにして歌う女性がだんだんメロメロになっていくのが実に面白いし、ファン心理を掴んだ憎い演出だ。
私にとってこの作品でのハイライトは15〜18にかけてのフランク・シナトラ絡みの曲で、15の軽快にスイングするインスト曲で衣装替えをしたマニロウが登場すると会場の興奮度はさらに高まるのだ。
シナトラが得意にしてた「Chicago」をマニロウ流に歌い上げ、次の「That's Life」へ繋げる辺りは観客も最高の興奮状態だ。
こうしてシナトラ・ナンバーを歌うマニロウを聞いていると生前のシナトラが「俺の次はお前だ」と後を託したという話も大いに頷けるし、確かに現在の音楽シーンではシナトラの後を継ぐようなスタイルのシンガーはマニロウ以外に見当たらない。
次の「When October Goes」も素晴らしい。
この曲の作詞者:ジョニー・マーサーは素晴らしい作品を山ほど書いた人で、特に映画音楽のヘンリー・マンシーニと組んで良い仕事をたくさん残している人だ。非常にリリカルな美しい詩を書く人で、オードリー・ヘップバーンの出演で人気が高い“ティファニーで朝食を”の挿入歌「ムーンリバー」の作詞者といえば分かり易いだろう。
そのジョニー・マーサーが亡くなる前に書き残した詩を全てマニロウに託したというのだから、マニロウという人の信頼が如何に厚かった分かる。
非常に美しい詩に美しいメロディ。この曲はスタジオ盤「2:00AM Paradise Cafe」にも収録されてるが、ここで聞けるライブの方が情感が豊かではるかに良い出来だ。
マニロウはアナログ時代にも良いライブ・アルバムを出しているが、時を経て彼自身の音楽が洗練された事、そして豪華なフルバンドのバック陣の演奏などによってこの映像作品が最も良い気がする。
最後まで飽きさせる事なく彼の音楽ワールドに引き込んでしまうワザは最近見られなくなった本物のエンターテイメントで、安心して音楽に身を任せられるプロの仕事がある。
日本でのマニロウ人気が何故今ひとつ盛り上がらないのか私には分からないが、マニロウが非常に優れたソングライターであるのは事実で、それはこの映像を見てもらえば分かってもらえる筈だ。マニロウ・ファンのみならず全ての音楽ファンに見てもらいたいソフトで、DTS5.1chサラウンドで再生するとコンサート会場にいるような疑似体験が出来る。

Barry Manilow Singin' With The Bigbands
1994年の作品で、マニロウがビッグ・バンドをバックに古いジャズを楽しげに歌うアルバム。マニロウの歌はもちろん良いが、それにも増して凄いのがバックのバンドの豪華さ。グレン・ミラー、トミー・ドーシー、レス・ブラウン、デューク・エリントンなどで、それに加えローズマリー・クルーニーという豪華ゲストが華を添える。
私には本物?のジャズ・ヴォーカルというのはちょっと重くて苦手意識があるのだが、それとは逆にポピュラー・シンガーが歌うジャズ・ヴォーカルがどういうワケか好きなのだ。
この作品でも「On The Sunny Side Of The Street」や「I Can't Get Started」等はすごく良いし、私のお気に入りでアンドリュース・シスターズで有名な「In A Apple Blossom Time」などはマニロウの歌と共にバックのアレンジに鳥肌が立つ思いだ。
バンドの演奏パートが結構たくさん聞けるのもこのアルバムを魅力的なものにしている。
manilow sings sinatra
マニロウが最も尊敬してたというフランク・シナトラのナンバーを歌った1998年入魂の作品。
年齢のせいなのかそれとも器の問題か分からないが、比べてしまえばやっぱりシナトラほどの深みはない。しかし、だからといってこの作品が良くないという事ではない。こちらの作品でもビッグ・バンドを従えて軽快にスイングするナンバーが続く。先のビデオ作品でも歌っている「My Kind Of Town」(Chicago Is)などはライブの方がドライブ感が強くて良い出来だが、それとは逆にビデオではマニロウがステージに登場するための音楽としてインスト処理されている「Saturday Night」が歌入りの軽快ナンバーとして収録されているのが嬉しい。
シナトラの死後いくつか発売されたメモリアル的な要素を持つ他の作品と聞き比べるのも面白い。