Johnny Winter & Edger Winter
TOGETHER

01 Harlem Shuffle
02 Soul Man
03 You've Lost That Lovin' Feelin'
04 Rock & Roll Medley
   Slippin' & Slidin'           
   Jailhouse Rock
   Tutti Frutti
   Sick & Tired
   I'm Ready
   Reelin' And Rockin'
   Blue Suede Shoes
   Jenny Take A Ride
   Good Golly Miss Molly
05 Let The Good Times Roll
06 Mercy Mercy
07 Baby, Whatcha Want Me To Do
SKY467784-2(輸入CD)
1976年作品
Live At :Swing Auditorium,San Diego Sports Arena

Member
  Johnny Winter
  Edger Winter
  Rick Derringer
  Floyd Radford
  Randy Jo Hobbs
  Don Hartman
  Richard Hughes
  Chuck Ruff


ジョニー・ウィンターといえば白人ブルース・ギタリストとして1960年代後半から現在に至るまで活動を続ける息の長いプレイヤーであり、私がベンチャーズ以降本格的にのめり込んだ最初のギター弾きであった。
ジョニー・ウィンターはやはりブルースを演奏しているのが一番良くて、一般的な意味で最も人気を得ていたリック・デリンジャーを擁した「and」の、よりロックに近い路線を走っていた時期は私にとって最高の時とは言い難い。
とはいえジョニーの名を世間に知らしめたのは「100万ドルのブルース・ギター」とか「世紀のスーパー・スター」とか云われた1968年のデビューから1970年代中期頃までの間である事は間違いがないと思うし、特にその間でも最もセンセーショナルな活躍をしたリック・デリンジャーと行動を共にした「and」の時代だろう。
実際にはリック・デリンジャーとステージを共にしていた期間はあまり長くはないのだが、何故か印象が強いのは今でもジョニーの代表作として挙げられる事が多い、71年発表の「LIVE」などの存在が一際輝いているせいなのかもしれない。
「TOGETHER」は1976年に発表されたライブ・アルバムで、ジミ・ヘンドリックスなども名演を残したサンディエゴ・スポーツ・アリーナのスイング・オーディトリアムで録音されている。
振り返ってみれば1976年にはもう1枚のライブ・アルバム、「CAPTURED LIVE」もリリースしており、ジョニーは1年に2枚のライブ・アルバムを発表した事になる。
しかし、「TOGETHER」はジョニーの他のアルバムとはかなり趣が違う作品になっている。
曲目リストを見てもらえば大凡の見当は付くと思うが、この作品ではあまり多くのギター・ソロを弾いてはいない。
おそらくウィンター兄弟の子供時代に生まれ故郷のテキサス州バーモントで夢中になって聞いていたであろうと思われるラジオから流れていた名曲の数々、それら二人にとって思い入れの深い曲をこのステージでは演奏しているのである。
7曲目の「Baby, Whatcha Want Me To Do」だけがジョニーお得意のブルース・ナンバーであり、云ってみればこれはジョニーの「Now and Then」という事になるのか?
それぞれの曲に関しては語る必要もないほどアメリカ音楽が好きな人だったら馴染みの深い曲が多い。
ジョニー・ウィンターといえば一般的には白人ブルース・ギタリストであるという認識が強いと思うし、それは決して間違った見方ではないと思う。
だが特にアメリカのミュージシャンに傾向が強い、音楽的なすそ野の広さという点についてジョニーのそれには目を見張らせるものがある。
ジョニーの古い録音を聞いた事がある人なら分かると思うが、メジャー・デビュー以前の古い録音にはブルースというカテゴリーでは括れないものも多く、私が特に驚いたのはアメリカ人に人気が高い「By The Light Of The Silvery Moon」のインスト演奏を聞いた時である。
それまでのジョニーに対するイメージをすっかり覆すその演奏は、1960年代に流行った「エレキ・サウンド」そのものであり、それはジョニーに抱いていたハードなブルース系ロック・ギタリストという印象からかけ離れたものだった。
またこの曲を選んだセンスにも脱帽したものだ。
ドリス・デイをはじめ多くのシンガーに愛唱されるスタンダードとなったこの曲を、例えばエリック・クラプトンやマイク・ブルームフィールドが演奏するというのは想像が難しい。
それに以前見たビデオではベンチャーズが得意としていた「ワイプ・アウト」を長々と演奏していた事もあって、そういう曲をステージで演奏してしまうジョニーの姿に驚かされてしまった。
そんなジョニーの引き出しの多さを知ってしまうと、このライブで演奏された曲目を見ても全く不思議には思わずに、むしろ当然という気がしてしまう。
得てしてブルース系のミュージシャンが演奏すると重くなって、雰囲気を損ねてしまう恐れがあるロックン・ロール・メドレーなどをジョニー流に軽快に演奏しているのが嬉しいし、南部なまりがあるとはいうもののギタリストとしては歌が良いのも幸いしている。
「水を得たサカナ」というのはこういう事を云うのかと思わせるほどにドライブした演奏が心地良い。
6曲目の「Mercy Mercy」も多くのアーティストが演奏しているが、私的にはここで聞かれる演奏がベストの出来である。
右チャンネルから聞こえるリック・デリンジャーのものと思われるオブリは、私にとってはこの曲に欠かせないものになっていて、この演奏を知らなかったら私はこんなにこの曲を好きにならなかったと思わせる名演奏だ。
正直にいえばこのアルバムがリリースされた当初は私も7曲目のスロー・ブルースだけがこのアルバムの中で聞くべき曲であると思っていたが、年令を重ねるごとに他の曲の良さが分かるようになってきたのだ。
ジョニーの参加アルバムとしてはもしかしたら異端に属するかもしれない本作は、私にとっては他のジョニーのアルバムと同様大のお気に入りであり、今でも何かと聞くことが多い。
もちろんブルースを演奏するジョニーが一番だとは思うが、また今のジョニーにこういうナンバーを演奏してもらいたいと思う今日この頃だ。

ジャケット裏側に見られるウィンター兄弟子供時代のスナップの数々。
この写真の時代にラジオから流れてきたヒット曲をこのライブでは演奏しているのだろう。
このアルバムが録音された頃はエドガーとジョニーの不仲が伝えられていたが、演奏を聞く限りそんな不安な要素は感じられない。
まさしくウィンター兄弟の「Now And Then」だ。