Jimmy Bryant
COUNTRY GUITAR GENIUS

Side-A
01 Laughing Guitar
02 Joy Ride
03 Spanish Two-Step
04 Freight Train, Take Me Home
05 Shivaree Mountain
06 Corn Ball

Side-B
01 Crying Guitar
02 I'm So Lonesome I Could Cry
03 Crying In The Chapel
04 Why Should I Cry
05 Laughing Face, Crying Heart
06 The Heart of a Clown
Liberty
LP-8100
1966年作品


元祖、早弾きギタリストであり、テレキャスター第一世代のジミー・ブライアント、1966年の作品である。
国内盤の発売時のタイトルは「カントリー・ギターの魅力」という時代を感じさせるもので、この頃の日本の音楽界にまだカントリー人気があった事を偲ばせるタイトルだ。
ジミー・ブライアントといえば縦横無尽な早弾きとスピーディー・ウエストとの共演により高い人気を誇っているが、この作品にはスピーディー・ウエストの参加はなく、ジミー単独のアルバムになっている。
人それぞれに好みはあると思うが、私自身はジミーのキャリアで大きな部分を占めるスピーディー・ウエストとの共演は今ひとつ好きになれない部分もあって、それはギミックが多いスピーディーのスティール・ギターに由来するのだ。
二人の共演を聞いているとスピーディーのスティールが邪魔に思われる事も少なくなく、その部分でついジミーの単独演奏を期待してしまうのだ。
今日CD化されている彼の作品の多くはスピーディー・ウエストとの共演盤であるが、本作品は純正ジミー・ブライアントのソロ・アルバムであるから、彼のギターを存分に味わう事が出来るのだ。
1925年生まれの彼はこの作品が録音された時には40才位だった筈で、脂がのった円熟期の演奏だといって良いと思う。
特別タイトルには明記されていないが、この作品は1曲目「Laughing Guitar」のタイトルに象徴されるようにA面に明るい雰囲気の曲を並べ、B面はこれまた1曲目のタイトル「Crying Guitar」にあるように暗い雰囲気の曲構成になっている。
1種のコンセプト・アルバムと言えなくもないが、深い意味はなさそうだ。

「Laughing Guitar」はトップ・ナンバーに相応しいジミーらしさの漂った曲で、ベンチャーズ以前のカントリー系エレキ・ギター・インストの標準的な?雰囲気の作品と言えるかもしれない。
早弾きがなければマール・ハガードのストレンジャースあたりもやりそうな雰囲気が感じられ、なかなか良い感じの曲だ。
2の「Joy Ride」もアップ・テンポのジミーらしい演奏で、テレキャスターの音も良いしギターのハモリにもカッコ良さを感じる。
南国の雰囲気が漂う往年の名曲「Spanissh Two Step」でのアコースティック・プレイや12弦の響きを効果的に使った「Fright Train, Take Me Home」なども、この時代に台頭を始めたベンチャーズを筆頭とするエレキ・インスト・グループと一線を引いた演奏で痛快だ。
ブルー・グラス調の目まぐるしい演奏が聞ける「Shivaree Mountain」や、ファズの響きが懐かしいA-6の「Corn Ball」など選曲もバラエティに富んでいて楽しく聞かせてくれる。
「Crying Guitar」から悲しいサイド?になる。
タイトルから想像すると70年代ロックに良くあった「むせび泣くような」ギターを連想してしまうが、ジミーに限ってもちろんそんな事はあり得ない。
早弾きを身上とするギタリストにとって、スローでメロディアスな曲というのは鬼門であるような感じもするが、さすがのジミーはそんなシロウトの不安を吹き飛ばしてくれる。アコースティック・ギターによるムードたっぷりの演奏になった。

「I'm So Lonesome I Could Cry」は「泣きたい程の淋しさだ」の邦題で知られるハンク・ウイリアムスの1949年の大ヒット・ナンバー。
多くの歌手がカバーしている人気曲で、当時ハンク・ウイリアムスがこの曲を歌うと会場の女性客がみんなすすり泣いたというエピソードがあり、ヴァイブやペダル・スティールを効果的に使った好演が光る。
続く「Crying in The Chapel」は私が大好きなセイクレッド・ソング。
パティ・ペイジやエルビス・プレスリーなど多くの歌手によって歌われた事から、広く知られるようになった名曲だ。
とりわけプレスリーのテイクはこのアルバムがリリースされる前年、つまり1965年にミリオン・セラーを記録していて、このアルバムでジミーがこの曲を取り上げたのはタイムリーだったのかもしれない。
こういう「間」が大切な曲をギターで表現する事自体にムリを感じるのだが、ここでは無難に仕上げられており、曲の雰囲気を壊してしまうような事はない。
アルバムは「道化師の心」と題された「The Heart of Clown」で締め括られるが、この曲もなかなか良い出来だ。
ちょっとジャズっぽいと言ったら語弊があるかもしれないが、いわゆるウエスタン・スイングなどとは違うムードの洒落た演奏で心憎い。
このアルバムではジミー・ブライアントの名前、あるいはキャリアから想像されるような早弾きはあまり聞かれない。
そういうジミーの演奏が聞きたければこの作品の翌年に出された「The Fasted Guitar in the Country」がオススメだが、本作のような作品もジミーの別の面を聞けるアルバムとしてなかなか良いと思うのだ。
冒頭で、ジミーとコンビを組んでいたスピーディー・ウエストのプレイが邪魔に聞こえる事もあると書いたが、本作のようなアルバムを通して聞いてみると、パフォーマンス全体のレベルとしては明らかにスピーディーとの共演盤の方がグレードが高いような気がするのもまた事実で、スピーディーのプレイが邪魔に聞こえる事があっても、全体としては収まりが良いように聞こえるのは不思議だ。
私が知る限り本作はまだCD化されていないようだが、他のアルバムも含めてオリジナル盤が復刻される事を願う。