RSU・グループ・サウンズ・フェスティバル
パープル・シャドウズ・ライブ
1978年5月10日:埼玉会館大ホール

01 小さなスナック
02 ミスター・ロンリー
03 別れても好きな人
04 メンバー紹介
   〜静かなるドン〜
05 キャラバン
06 心の虹
07 サウンド・オブ・サイレンス
08 小さなスナック

この音源は私の友人が主宰し、かつて私も在籍していた事があるRSUが1978年5月に開催した「グループ・サウンズ・フェスティバル」の模様を記録したものである。
パープル・シャドウズというと「小さなスナック」(68年3月発売)の大ヒットイメージが付きまとう為に、「歌謡コーラス・グループ」的な印象が強いが、私自身はあまりそういうイメージを持っていない。
かつて私は偶然の幸運が重なってジャズ喫茶のタダ券を手に入れる事が出来た時代があった。
もとよりタダ券であるからタイガースやテンプターズといった超人気グループのステージを見る事は出来なかったが、いわゆるB級とされるようなグループのステージはかなりの回数見る事が出来た。
パープル・シャドウズも何回か見る事が出来たが、当時既にギターへの興味が強かった私にとってこのグループの演奏は一際印象に残っている。
世間一般の見方とは別に、ナマで見るパープル・シャドウズはギター少年(当時は私も少年だったのだ!)の憧れに成り得る演奏を繰り広げていた。
「キサナドゥーの伝説」という曲は日本ではジャガーズのカバーがヒットしたが、ジャズ喫茶などではパープル・シャドウズもやっていて、私は今井久のギターが格好良かったパープル・バージョンの方が好きだったのだ。
パープル・シャドウズというグループ名にしても「パープル=グループのイメージ」、「シャドウズ=今井久のギターがイギリスのバンド、シャドウズのそれに似ている」という事から付けられた名前のようで、つまり元々今井久のギターを中心に据えたバンドであったのだ。(パープル・シャドウズ結成の経緯を見るとこの辺の事は良く理解出来るのだが、ここでは割愛する。)
このグループの正式解散がいつだったのかハッキリとは分からないが、このコンサートが行われた1978年はバンドの解散からまだ10年も経っていない時期で、現役時の残り香を感じさせる演奏が聞けるという意味で貴重なものだ。
多くのGSが残した曲の数々で印象深いギターというと、タイガースの「君だけに愛を」、テンプターズの「神様お願い」のイントロ、そしてパープル・シャドウズの「小さなスナック」というのが私のベスト3なのだが、この日のステージのパープルは昔ジャズ喫茶で見たあの日のステージのように、ギター・バンドの側面を見せてくれる。
「小さなスナック」や「別れても好きな人」ももちろん良いが、この日の聞き物は「キャラバン」だろう。
当時のGSがこういうインスト物をやっているのは寺内タケシやシャープ・ファイブ、そしてブルー・コメッツくらいしか見た事がないし、仮にやったとしてもジャズ喫茶等でのステージが多かった筈だから、こういう演奏がコンサート・ライブというカタチで残されたのは大変に嬉しい事だ。
正直に言って今この演奏を聞いてみればそんなに驚くほどの事はないのだが、パープル・シャドウズが紛れもないギター・バンドだったといえる証にはなるのではないだろうか。
「小さなスナック」以降ヒット曲に恵まれなくて、起死回生を狙って作られた「別れても好きな人」(69年11月)は、皮肉にも後に歌謡シーンで大ヒットを記録したが、パープル・シャドウズの演奏の方が良いと思うのは私だけだろうか。
「静かなるドン」は昔のバンドが良くやっていたコント紛いの遊びだが、こういうのを曲間に挟みつつステージを進行していったのもジャズ喫茶を彷彿とさせる。
また今井久が使っているギター(ボイス・フロンティア)の入手にまつわるエピソードが語られているのも他では聞けない面白いものだ。
最初にして最後になってしまったオリジナル・メンバーによる唯一のライブは大変貴重であるばかりでなく、雰囲気も暖かくて楽しさに満ちている。