ERNEST TUBB and his Texas Troubadours
On Tour
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Side-A 01 Introduction:Johnny Johnson,Ernest Tubb 02 Women Make a Fool Out of Me 03 Go On Home 04 Steel Guitar Rag 05 Old Love, New Time 06 Try Me One More Time 07 Lover's Waltz Side-B 01 Drivin' Nails In My Coffin 02 Out of Mind 03 Redskin Rag 04 Watching My Past Go By 05 Bandera Waltz 06 In and Out |
DECCA DL74321 リリース年の詳細については不明 ですが、このアルバムに収録された 曲の録音データが1962年となっているので 62年から63年頃のリリースと思われます。 |
先にこのコーナーで紹介済みのテキサス・トルバドースの「Fabulous」はこのバンドの主といえるアーネスト・タブ抜きの、言ってみればバック・バンドの単独アルバムであった。
しかし、今回紹介するのはバンドの主=アーネスト・タブがドンと構えたこのバンドの本来の姿を収めたものだ。
一般的に実況録音盤を表現するのに今なら「LIVE」というのが普通の言葉かと思うが、「In
Person」、「On Tour」などというのもあった。
このアルバムも「On Tour」と名付けられたライブ盤としてファンには認識されていたし、私は長い間それを信じてきた。
ジャケットに使われている写真もいかにもそれらしい雰囲気で、このライブが収録されたという建物の前でバンドのメンバーがツアー・バスの前で並んだカントリー然としたものだ。
しかし、このアルバムがライブだというのは真っ赤なウソで、スタジオ録音に観客の歓声などを後からカブせた疑似ライブであるという事が後に判明した。
このアルバムのジャケットの裏にはこの演奏がオクラホマのタルサにあるケインズボールルームという所で、2000人を越える幸福なファンの前でいつものようにエキサイティングな演奏を繰り広げたものが録音されたと書いてある。
しかしこれはウソだったのだ。
だがすべてがウソだった訳ではないようで、一部は事実だったという記述もあるがどこがそうなのか良く分からない。
その話を聞いてからこのレコードを良く聞いてみればどうも出来過ぎの感じはある。
特にこのアルバムの中で最高の出来、いやカントリー系ギター・インストの中でも群を抜いて出来がよい「Steel
Guitar Rag」を注意深く聞いてみれば、この盤が疑似ライブであるという事実は充分に理解出来るのである。
ライブにしてはあまりに緻密過ぎるのだ。
だが、この盤が本物のライブでなはないという事がこのアルバムの評価に影響を及ぼす事はまったくないのだ。
私は決してギターの音ばかりに心惹かれるギター音楽偏愛者ではないと自分自身では思っていて、やはり良いヴォーカルがあって初めてギターも生きてくると思うのだが、正直言ってアーネスト・タブのヴォーカルは好きになれない。
これはきっと生理的なものなのでどうしようもない事だし、私がカッコ良いと思っているバック陣はインストをやった時にまるでウルトラマンのように変身するので、もっぱらアーネスト・タブ&テキサス・トルバドースのアルバムを聞くときの楽しみはインストという事になってしまう。
彼らのアルバムに限らないが、カントリー・バンドのアルバムにはインストを含んでいる事がけっこうあって、それは宝庫といっても良い位に魅力的なものが徳川埋蔵金の如く埋もれているのだ。
その中で私のいちばんのお気に入りがこのバンドなのだ。
そしてそれを決定付けたのが本作に収録されている「Steel
Guitar Rag」で、このテイクに初めて出会った日から今日まで絶え間なく聞き続けている私のお気に入りである。
この曲自体はカントリーの世界では非常にポピュラーで、多くのペダル・スティール奏者が取り上げているのは勿論の事、ベンチャーズもやっているし、ブルース・ギタリストのアール・フッカーが「Guitar
Rag」とタイトルを変じてかなり怪しげな演奏を繰り広げているのも面白い。
ペダル・スティールとギターの組み合わせはこのバンドの専売特許ではないが、決して他の追随を許さないまでに高めたのはこのバンドかもしれない。
ウエスタン・スイングの人気者として良く名前が挙げられるハンク・トンプソンのバンドは私も好きで、テキサス・トルバドースとは違った意味でカッコイイのだが、どうしてもダンス・ミュージックという印象は拭えず、ペダル・スティールとエレキ・ギターを活かした、聞かせるインストという点ではやはりテキサス・トルバドースなのである。
「Steel Guitar Rag」史上最高のアレンジと演奏と言われるこのテイクは、このバンドのギタリストであるレオン・ローズのアレンジだと聞いた事があるが、そうだとしたらなかなかスゴイ人である。
どんな世界でも多芸な人は重宝されるが、レオン・ローズは歌って踊れる・・・・・いや、まさか踊る事はあるまいが、ペダル・スティールの定番曲として多くのアーティストに演奏されてきた曲を、ペダル・スティールとエレキ・ギターの聞かせ所を存分に盛り込んだアレンジを施した実力は並ではない。
一方のペダル・スティールもバッド・チャールトンの代表作品として評価出来るものだと思う。
楽器の表現力としていちばん優れているのはピアノだと思うが、この演奏を聞いてみるとペダル・スティールの表現力というのも侮れないものだと思う。
時に聞かせるジャズっぽいアプローチの時の鋭い音や、暖かみのある和音の響きなどは他の電気?弦楽器では得難いものに感じられるのだ。
その部分がペダル・スティールの御大であり、私にとってクールな印象が強いバディ・エモンズとの最大の違いなのかもしれない。
どうも思い入れが強いせいで「Steel Guitar
Rag」ばかりに話が集中してしまったが、このアルバムには他にもインストが収められている。
レオン・ローズも曲作りに参加しているA面7曲目の「Lover's
Waltz」とウエスタン・スイングらしいアプローチがカッコイイB面3曲目の「Redskin
Rag」だ。
ラヴァーズ・ワルツはレオン・ローズのギターの出番もあるが、何といってもワルツがピタリとハマる楽器、ペダル・スティールのためのような作品だ。
レッドスキン・ラグはスティール・ギター・ラグほどの緊迫感はないものの、スイングっぽい演奏がなかなか良いものだ。
このライブ盤が疑似ライブであるという事を知った後でも、この曲の背後で聞けるホール・エコーっぽい響きや人の動きらしいノイズなどから判断して、どうしても疑似ライブであるという事が信じられなかったといういわく付きの演奏。
冒頭でも述べたように私はどうしてえもアーネスト・タブの歌声が好きになれず、インスト曲ばかりに話が集中してしまった事を許して頂きたいが、もしあなたがこういう音楽に興味があるなら是非聞いて欲しいアルバムだ。
このアルバムは現在の所CD化されていないようだが、ベア・ファミリーから出ているボックス・セットを2セット買うと彼らの演奏しているインストは殆ど入手できるようだ。
ボックス・セットを2セットも買うのはかなり高額な出費になるが、今後もこれらのアルバムがCD化されるという事は期待薄で、だとしたら廃盤にならないうちにボックス・セットを買っておいた方が賢明なのかもしれない。
因みにこのボックス・セットを買うと今回紹介した「On
Tour」に収録されている曲がライブ・テイクではないという事が分かる。
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これが本文中で紹介したベア・ファミリーのボックス・セットのひとつ。 「On Tour」のジャケットと同じ写真を使っている。 CD6枚組でたっぷりと彼らの演奏が楽しめるが、殆どはアーネスト・タブ の歌。しかし、「On Tour」に収録されているインスト曲はこのセットで聞 ける。そしてこれがスタジオテイクだという事が理解できるのだ。 本文中で私はアーネスト・タブの歌声は好きでないと言ったが、歌のバ ックで聞けるギターやスティールは良いし、未発表テイクが何曲か収録 されているのも魅力だ。そしていつもながらベア・ファミリーのボックス・セット に付き物の冊子の充実度とレアな写真がファンには嬉しい。 |
ERNEST TUBB & THE TEXAS TROUBADOURS With LORETTA LYNN WALTZ ACROSS TEXAS 1998&1999 Bear Family Records BCD15929FI |
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こちらは1965年、シアトルのスパニッシュ・キャッスル・ボールルームで 録音された正真正銘のライブ盤。「Panhandle Rag」と「Rhodesbud Boogie」 の2曲のインストが収録されている。 近年このアルバムの完全版というのが出て、そちらには上記の2曲に加え て「C-Jam Blues」が収録されている。 ギター・ファンとしてはテキサス・トルバドースの他のアルバムのCD化を切 に願うのみだ。 |
ERNEST TUBB LIVE 1965 1989 Rhino Records R2 70902 |