その2

再結成
KNEBWORTH 85
1984年に全盛期、つまり2期のメンバーによって再結成されたパープルの初ライブ。
雨の中のライブとしてメンバーにも印象が深かったのかこの時の模様を語った記録もあるが、何よりも記さなければいけないのは、この時期はまだリッチーとイアン・ギランの間がうまく行っていたようだという事。
ジャケットの内写真にはリッチーとイアンがステージ上で寄り添っているような場面も見られる。
とは言っても演奏には全盛期の緊張感がなく、コレクター御用達品かもしれない。

Nobody's Perfect
こちらは1987年のワールドツアーの模様を収録したLP2枚組の作品。
アルバムタイトルが示す通りかつてあれだけの演奏を繰り広げたパープルでさえも、「今やこんなもの」という感じの内容のアルバムで、やはり完璧な人間はいないようだ。
しかし、再結成第1作目となったスタジオ盤の「パーフェクト・ストレンジャーズ」はなかなかの出来で、特にパープルらしい楽曲が多く収録された佳作であったと思う。
Come Hell or High Water
思い返せば1976年リリースの「メイド・イン・ヨーロッパ」もパープルに於けるリッチーのラスト・パフォーマンスというコピーであったがそれから17年の歳月を経た1993年にまた同じコピーを冠したアルバムが出されたワケだ。
しかし、全盛期以前からずっとパープルを聞いてきた私としてはこういう作品は聞く程にツライものがある。特にリッチーの投げ遣りな態度は情けない。
パープルの古いナンバーは私にとって聞くに耐えないが、新しいナンバーはそれなりに演奏しており聞き易い。
同じタイトルの映像版も出ており、買うならCDよりも映像版の方がオススメだ。

映像作品
Deep Purple & The Royal Philharmonic Orchestra
思い返せばこれがパープルの初ライブ・アルバムだったワケだが、ずいぶん思い切った選択だったと思う。
確かに当時のロック・シーンではこのアルバムのようなコンセプトの作品作りが流行っていて、パープルもジョンの切なる意向に沿って本作品となったのだが、今になってみるとこのライブを作ってくれて良かったと思う。
何せ各人のプレイが若い。そしてそういう荒削りな若さが本作品の最大の魅力だろうし、私自身パープルがタダ者のバンドではないと感じたのは本作品が最初であった。もちろんCDやレコードで聞いても良いが、せっかく映像があるのだからこの作品は映像で楽しみたい。
それとこのライブの第1部、既に音だけは1部リリースされているが映像のソフト化はないのだろうか。本作品の冒頭で第1部の模様がチラリと見られるが、続きを是非見たい。
Doing Thier Thing
70年代初期と思われるテレビ映像。4曲しか収録されていないし全編でも23分程の時間だが、内容は素晴らしい。
後に見られたようなメンバー間の確執もまだなく、楽しげに演奏しているのが嬉しい。
このプログラムは当時NHKテレビで放送されたが、その時の字幕では「Wring That Neck」がFree Form No.1、そして「Mandrake Root」がFree Form No.2と紹介されていたように記憶している。内容を見てみるとフリーフォームというタイトルの方が適切という感じがする。
それにしてもここに収められたエネルギーは凄い。各人の技量も充分なところに勢いが加わったのだから、向かうところ敵なしという状態だったのだろう。
Machine Head Live 1972
もう説明の必要もないと思うが、パープル絶頂期のパフォーマンスを捉えたファン必見のソフト。
収録されたのは1972年1月3日、デンマークにて。これは今や伝説とさえ言える日本公演の7ヶ月前に当たるワケで、全盛期の勢いが感じられる素晴らしい内容。しかし、音声がモノラルなうえ画像もモノクロとすべて“モノ”づくしなのだ。オマケにカメラワークが信じられない程に悪くてイライラさせられるのが非常に残念なのだが、内容が素晴らしいのでこの作品の評価としては五つ星を付けられる。
日本公演の時とはサウンドも演奏も微妙に違っていて、特にリッチーのギターの音色の違いはギターの個体差によるものなのかと思う。個人的にはこの映像で見られる黒ストラトの音の方が好きだ。
来日公演が当初の予定通り5月に行われていたら、もしかしたら黒ストラトでの公演になったのかなァ、と心密かに思うのだ・・・・・。思ってもどうにもならないけど。
1974 California Jam
こちらも伝説となったステージを収録。パープルの全盛期は間違いなくイアン・ギラン、ロジャー・グローバーを擁した第2期であるが、3期も商業的には成功していてサウンドも良い。グレン・ヒューズの加入によってヴォーカルにハーモニーの厚みが出たが、それは2期のパープルにはない音だ。加えてロジャーとは違う動的なベースもパープルに新たな風を吹き込んだし、デヴィッドとグレンの正反対の声質もこの時期のパープル・サウンドの面白さだ。
このライブでは色々なゴタゴタに巻き込まれたようであったが、3期メンバーによるパフォーマンスが見られる唯一の映像作品として必見だ。
Heavy Metal Pioneers
主にジョン・ロードとロジャー・グローバーによって語られるパープル・ストーリー。バンド名の由来から結成に至る経緯まで興味深い話で綴られるが、この作品の収録時期が再結成のしかもイアン・ギランが脱退した後の時期であるジョー・リン・ターナー在籍時というのがちょっと残念。この作品の中ではイアン・ギランが語る場面はなく何となく片手落ちの感はある。しかし、あのリッチーが以外にも結構喋っており、初めてこの作品を見た時にはリッチーが喋っている事実に驚いたものだ。
だが残念な事に演奏シーンの映像は殆ど既出のもので、その部分ではちょっと寂しい。
Come Hell or High Water
1993年11月9日の収録。
再結成パープルの映像ソフトとして初のものであったが、かつてのレコード作品「メイド・イン・ヨーロッパ」と同じように「リッチー・ブラックモア・ラスト・パフォーマンス」の冠が付けられた作品。
1曲目の「ハイウェイ・スター」途中までリッチーはステージに姿を見せず、ギター・ソロの場面になってから忽然と現れれ、そしてテレビ・クルーにコップに入った水を投げつけるという暴挙に及ぶ醜態が収録されている。
全体にリッチーのやる気のない態度が目立ち、演奏にもかつてのような神業的なスリリングさは見られない。曲間に散りばめられた各メンバー(リッチー以外)の語りでリッチーの暴挙ぶりが暴かれている。
Machine Head
パープルの代表作になった1971年の名盤「マシーン・ヘッド」の制作秘話を、2期のメンバーと関係者が語っていく内容で興味深い話を各メンバーが楽器を片手に説明を加えていく。
過去にリリースされた「語り」もののソフトではメンバー総出演という事はなかったので、意外にもこれが初のメンバー揃い踏みといった感じ。
正直に言って熱心なファンなら既に知っているような内容が多いが、それがメンバー自らの語りと楽器を片手にデモンストレーションしているところが本作の最大の見所だろう。
しかし私は声を大にして叫びたい。何故「レイジー」が割愛されているのか。本来「マシーン・ヘッド」とは関係のない「ブラック・ナイト」の事が語られているのに、私が最も好きな「レイジー」について語られていないのは納得できない。
でもまあ、ソフトとしてこのシリーズなかなか面白い出来だ。
Masters from the Vaults
これは新しくリリースされたソフト。内容的には先に紹介した「Doing Their Thing」が主体で、その他にテレビ・クリップの「No No No」と「Highway Star」、そして数少ない1期の映像から「Hallelujah」、さらにイアン・ギランの・ソロ・ライブから4曲収録されている。どれもファンなら既に知っているものばかりで珍しさはないが、いろいろなソフトを揃えなければ見られなかった映像が1枚のDVDに集約されたのは喜ばしいことだ。
しかし、残念な事に「Doing Their Thing」の映像などは私が所持しているLD版よりもはるかに画質が悪くて見苦しい。
DVD化に際してキレイにすることは出来なかったのだろうかと思うし、各曲の冒頭で曲目紹介の字幕の出ている時間が長く、その分演奏シーンが見られないのが中途半端な編集というイメージを与える。
実際ファンの心理が分かっていればこういう編集は有り得ない筈で、無神経な作り方に腹が立つ。
パッケージにはデジタル・リマスターにより5.1chサラウンド再生が可能となっているが、元が2ch作品だけにサラウンドの効果は殆ど感じられない。