Carpenters
Live In Japan

武道館1974

01 プロローグ
02 リハーサル風景
03 オープニング・メドレー
   スーパー・スター/雨の日と月曜日は
   恋にさよならを
04 トップ・オブ・ザ・ワールド
05 ヘルプ
06 ミスター・グーダー
07 遙かなる影
08 ジャンバラヤ
09 イエスタデイ・ワンス・モア
10 オールディーズ・メドレー
   リトル・ホンダ/この世の果てまで
   ハイ・ロン・ロン/リーダー・オブ・ザ・バック
   ジョニー・エンジェル/ブック・オブ・ラブ
   ジョニー・B・グッド 
11 シング
12 サムタイムズ
13 愛のプレリュード
14 ふたりの誓い
15 クレジット









1974年収録
UIBY1010(DVD)
ユニバーサルミュージック
(1996年にLD、ビデオで発売されたものを、2001年
11月にDVDにて発売)


不世出のシンガー、カレンが亡くなって早20年近くの歳月が経過してしまったが、その人気はいささかも衰えていないような気がする。
テレビ・ドラマの主題歌に使われたりテレビ・コマーシャルでの使用頻度が高い事がそれを裏付けているように思う。
ひとつにはサウンドの普遍性と誰にでも好かれ得る・・・・いや・・・・言葉を代えれば人に嫌われる要素の少ないポップな感覚を持ち合わせている故だと思う。
しかし、何故なのか残された映像は非常に少ない。
あれ程の人気を誇り、時代的背景を考えても映像に於ける技術は格段の進歩を遂げていた時にカーペンターズは全盛を迎えていた筈なのに、気の利いた映像は殆ど残されていないというのが驚くべき実状だ。
このソフトだって実際のところはテレビ番組用に収録されたものだから、テレビでご覧になった方も多いと思う。
かく言う私もテレビを見たし、どうしても記録を残したかったので音声だけテープに録音した記憶がある。
もともとテレビ番組として製作されたものだから純粋にカーペンターズの音楽だけを楽しもうとする向きにはドキュメンタリー・タッチの作風はちょっと邪魔であるが、肝心の演奏部分はバッチリ収録されているので安心して楽しめる。
ステージはレオン・ラッセルとデラニー・ブラムレットがリタ・クーリッジのために書いたという「スーパー・スター」から始まり、「トップ・オブ・ザ・ワールド」、「ジャンバラヤ」など彼らのヒット曲がてんこ盛りだ。
「スーパー・スター」はすっかりカレンの歌声が耳に馴染んでいてリタ・クーリッジの存在を忘れそうになるが、リタのややフラット気味の歌声も捨てがたい味があるので、チャンスがあったら是非聞いてみて欲しい。
しかし、敢えて言うならこのソフトの中でのハイライトはアルバム「ナウ・アンド・ゼン」のB面に収録されていたオールディーズのヒット・メドレーだろう。
カーペンターズは極めて良質のカバーを数多くレコーディングしているが、特に「ナウ・アンド・ゼン」に収録されたものはカーペンターズのポップス・カバーの集大成とも言えるものだと思う。
個人的な好みで言わせてもらえば、シェリー・フェブレー1962年の大ヒット曲「ジョニー・エンジェル」はオリジナルよりも圧倒的にカーペンターズ・テイクの方が良い。
「ナウ・アンド・ゼン」に収録されているこの曲では、オープニングのコーラスが左から右にパンしていくところや、ストリングスの軽快なアレンジなどもこの曲の雰囲気に合ったものになっていて、演奏や歌はもちろんだが、計算された録音にも耳を傾けたいところだ。
話がそれたがこのライブ映像のメドレーを構成している曲に関しては「ナウ・アンド・ゼン」に収録されているものとは選曲が若干違っているのだが、雰囲気はそのまま再現されている。
それにしてもあの頃の(1950年代〜60年代)にかけてのアメリカ・ポピュラー音楽界には良い曲が多い。

この作品全体を通して感じるのはカレンのハツラツとした若さだ。
すでに彼女が亡くなってしまっている事などが余計にそういう印象を見る者に与えるのかもしれないが、今日のアメリカには見えなくなってしまったかつてのアメリカの健康さを再現しているようで、アメリカ音楽が好きな私には嬉しい。
それにドラムを叩いている時のカレンの楽しそうな表情はスタジオ盤では到底味わえないものだ。
このカレンの表情を見ていると、カレンがドラムを叩くのを希望していたというのが良く分かる気がする。
さらにギター好きにとって嬉しいのは、カーペンターズの多くのアルバムでプレイしているトニー・ペルーソが見られる事も喜ばしい。
ギブソン335を抱えてカーペンターズには欠かせなくなったあの音がライブで見られる事もこの作品の魅力のひとつだ。
欲を言わせてもらえばベースがジョー・オズボーンなら私的にはもっと良かったのだが・・・・・。
唯一この作品にケチをつけるとしたら、カーペンターズの一連のスタジオ録音盤と比べて若干音が痩せて聞こえる事だ。
最新技術を駆使して計算に計算を重ねて音を構築していったスタジオ盤と比べるのは酷な事だし、意味がない事だと承知はしているがそれでもなお気になってしまうのである。
だがそのこと自体が全体の雰囲気を引き下げるものでは決してない。
実際には1974年というのはカーペンターズの人気にも翳りが出てきた頃だったと思うし、この後カレンの歌声やサウンドから輝きが薄れていくというような状態に突き進んで行くが、そういう意味からしても本作はカーペンターズ最初にして最後のライブ映像であるといえるのではないか。