バニーズ
ゴールデン・コンサート

01 テーマ
02 太陽の花
03 ブラック・イズ・ブラック
04 愛のリメンバー
05 男が女を愛する時
06 この胸のときめきを
07 太陽野郎
08 日本古謡メドレー
09 ピンと針
10 ウエスト・サイド・ギター
11 ペルシャの市場にて
12 津軽じょんがら節
13 ア・ハード・デイズ・ナイト
14 テーマ
キング・レコード
KICS 8033
(オリジナル盤は1968年)


寺内タケシ率いるバニーズ、1968年杉並公会堂でのライブ盤。
あの頃録音されたGSのライブ盤全てを聞いた訳ではないが、このライブ盤はGSが残したライブ盤の中でも最も良い出来の1作品だと思う。
私は決して寺内タケシの信者ではないので彼の全てのライブ作品を聞き比べた訳ではないのだが、私が知り得るいくつかのライブ作品と比較しても、この作品はベストに近いものだと思う。
今から振り返ってみればあまりにも短かったGSの活動期間の中で、全盛期のステージを捉えたライブが残っているグループというのは意外なほどに少ないのが実状で、そんな中で本作品は最も活き活きしていた寺内タケシ&バニーズの一時代を切り取ったものとして貴重だ。
アルバムは1〜7までがバニーズの演奏で、8〜14までの曲に寺内タケシが参加している。
アナログ盤で出た時には1〜7がA面、8〜14がB面となっていたわけで、当時は充分満足して聞いていたが、今改めて聞いてみると何だか物足りない。
バニーズの演奏も寺内タケシの演奏も時間が短くて不満が残ってしまうのだ。
ステージではもっと多くの曲を演奏していた筈で、このアルバムに収められた曲以外にももっとやっていたと思うのだが、出来が悪かったのだろうか。
中でも1967年に発表されて大ヒットとなったベートーベンの「運命」が収録されていないのは大いに残念である。
ずっと後のライブ・アルバムには収録されているものもあるが、それは全盛期の勢いがあった頃の演奏と比べるとかなり物足りないのだ。
「運命」がこのライブ・アルバム収録曲と同じような演奏レベルと音質で収録されていたら、という仮想はちょっと空しいが、未収録なのは残念な事である。
しかしそんな不満は別にして、このアルバムはなかなか良い。
意外に知られてないような気がするのだが、バニーズというのは楽曲が良くて、このアルバムで聞ける何曲かでもそれは理解できると思う。
特に大ヒットを記録した「愛のリメンバー」はつくづく良い曲だと思う。
8曲目から加わる御大、寺内タケシの演奏も活き活きしていて良いものだ。
寺内タケシが演奏するインストが他のグループと違っていた最大の点は、アレンジにあると思う。
ベートーベンの「運命」がその良い例になると思うのだが、長大なクラシックの楽曲や民謡などを短く簡潔にまとめて、ギターの聞かせ所を作るワザは他のグループにないものだった。
それは本作の8曲目からの演奏を聞いてもらえば良くわかる筈だ。
そしてあの時代に客席を埋め尽くした若い女の子がこれらの曲をどれほど理解していたかを考えると恐ろしいのだが、御大の演奏にはほとんど手抜きがなく、録音から30数年という時間の経過に伴う古さはあるものの、今日聞いても決して色褪せた演奏ではない。
オリジナル曲の「ウエスト・サイド・ギター」など当時の日本のGSとしてはかなり進んだ演奏で、御大のテクニックが満載だ。

私事になるが、私は昔このアルバムの「日本古謡メドレー」と「ペルシャの市場」をコピーした事がある。
どちらも原曲の持つ美味しい部分を取り上げて上手くまとめたもので、なかなか優れたインストに仕上げられてると思うのだ。
当時はあまりよく分からずにやっていたが、良く聞いてみればオクターブなども使ってるし、私が単音で演奏していた部分も和音だったりしている。
だから、という訳ではないが、当時のGSとしてはとてもちゃんとした演奏をしていたのだと改めて思う。
「ペルシャの市場」でのエコーを効かせた美しい音色や、「日本古謡メドレー」で尺八のバックを取る時のメロディ・ラインの取り方など、寺内タケシのロマンチストな部分も垣間見えて、そういう部分がまた楽しい。
当時インストを売り物にしていたバンドは少ないが、バンドの少なさに比例してそれらのバンドのライブ音源というのも殆ど全滅に近い状態だ。
そういう貧しい状態の中で奇跡的に残されたインスト演奏のライブは考えてみれば本当に貴重だ。
他のGS物に比べて録音も良いので興味がある方にはオススメだ。