B.B.キング
ライブ・イン・ジャパン

01 Everyday I Have the Blues
02 How Blue Can You Get
03 Eye Sight to the Blind
04 Niji Baby
05 You are Still My Woman
06 Changes and Things
07 Sweet Sixteen
08 Hummingbird
09 You Know I Love You
10 Japanese Boogie
11 Jamming at Sankei Hall
12 The Thrill is Gone
13 Hikari88
MCAビクター
MVCM 253
2500円(税込み)


ジャケットのデザインがなかなか
良い。まるで映画のカットバック
を見るような、B.B.の前景と後ろ
姿がとってもそれらしい雰囲気だ。


B.B.キングは最も多く来日を果たしたブルース・マンだと思われるが、その記念すべき1回目の来日のステージを記録したのがこの作品で、1971年の3月に今は無き東京・大手町サンケイホールで録音されたものだ。
B.B.のライブというと「ライブ・アット・ザ・リーガル」が最高だというのが多くのファンや評論家の間では通り相場になっているが、私はブルース初心者?の頃に音楽雑誌に掲載されていたレコード評を頼りにこのアルバムを買ってみた。
しかし、その評判とは裏腹に私はそれ程良いとは思わなかった。
今になって見れば良さも分かるし、当時良いと思わなかった理由もこじつける事が出来るが、あの頃は何となく納得出来ないままにレコード棚にしまい込んだのだ。
しかしこの「ライブ・イン・ジャパン」を聞いた時には「これだっ!」と大袈裟に叫び聞き狂ってしまった。
だがこのアルバムを発売と同時に入手した訳ではなくて、友人がテープに録ってくれたものを聞いていたのだ。
しかし後年どうしてもこのアルバムが欲しくなりさんざん探し回ったが見つからず、すでにオリジナル発売の2枚組は廃盤になっていたのだ。
その代わりに手に入れたのが、オリジナル盤から抜粋された何曲かを当時流行りだった4ch加工を施したアルバムを2chに戻したというややこしい手順を踏んだアルバムだった。
不満は残ったものの友人にもらったテープもあった訳だし、何よりも手に入れたアルバムのジャケット写真が好きでお気に入りのアルバムになったのだ。
そして時を経てCDが発売された。
今からもう10年も前にCDとして全貌が復刻された事は大変に喜ばしいし、日本でのブルース・ミュージックの初ライブ盤という記念碑的作品が再登場したのはあらゆる意味で大歓迎だった。
好みは「十人十色」とは良く言われる事だが、この作品を私が気に入った理由は、B.B.のギター・プレイがタップリ聞け、そのグレードもなかなか高いという事に尽きる。
B.B.はライブ作品の多い人で、ちゃんと数えてはいないのだが、かなりの数のライブ・アルバムがある筈だ。
それらのライブ・アルバムの中でもこの作品はギター・プレイの占める割合が多い1枚で、B.B.作品の・・・・・というよりもギターがタップリ聞けるブルース・アルバムとして好きなアルバムなのだ。
もう1枚「ブルース・イズ・キング」という大好きなアルバムがあるが、これは黒人クラブで収録されたものでかなり荒い雰囲気の中で本来の?B.B.の演奏が聞ける好盤である。

さて話は戻るが、この作品はB.B.の初来日ライブというだけでなく本格ブルース・ミュージシャンの初来日記録という意味でも貴重だと思うのだ。
この後に続いたブルース・ミュージシャンの来日ラッシュはこの公演の成功ナシには有り得なかったとも思われるからだ。
私は本場で(例えばシカゴのクラブのような)ブルースを聞いた事がないので、現地でどんな演奏が繰り広げられ、オーディエンスはどんな反応を示すのか良く分からないが、それは東洋人を相手にするのとは違うはずだ。
日本の民謡歌手がアメリカでコンサートを開くのに似ている、という表現が適切なのかどうか分からないが、少なくてもそれに近い感覚はあったのではないかと思う。
今なら日本のファンもそれなりにブルースに詳しくなったが、1971年の日本でいったいどれほどの人がブルースに対する正しい知識や耳を持っていたのか甚だ疑問だ。
そんな東洋人相手のステージであったのにもかかわらず、この作品で聞ける音は手を抜いたような印象は見えない。
厳密に言えば先の黒人クラブのライブ「ブルース・イズ・キング」などと比較するとオーディエンスの反応はかなり違うが、それは当たり前の話で、この来日ステージでは目一杯のステージを展開してくれたように思われる。

繰り返しになるが私がこの作品を好む理由は、やはりギター・プレイがタップリ聞けるという事だと思う。
もしかしたら歌よりもギター・パートの方が多いのではないかと思わせるほど良く弾いている。
音も良いと思う。
あのエーストーンのアンプにどんなチューニングが施され、またどんなスピーカーを搭載したのか、このライブの何年か後に関係者に話を聞いた事があるが、残念ながらすっかり忘れてしまった。
B.B.の音は本当に特徴的だ。
B.B.を良く知っている人には「いつもの音」と言ってしまえば分かり易いかもしれないが、その音でよく歌うギターをグイグイ弾きまくっているのが本作だ。
リーガル盤との比較で1例を挙げよう。
両方のアルバムに収録されている「How Blue Can You Get」の演奏時間はリーガル盤では3分程だが、本作では5分を越えていてその長さの違いはそのままギター・プレイの長さの違いだ。
更にこのアルバムに収録の13曲中4曲がインストで、その4曲の合計タイムは31分余りになり、これはこのアルバムの総合計タイム76分58秒の半分弱という時間である。
先の「How Blue Can You Get」はイントロが始まってから2分55秒位から歌が始まるのもリーガル盤とは大きく異なる。
どうも話が些末な事になってしまったが、要はこのアルバムではB.B.のギターが盛りだくさんだという事なのだ。
(誤解のないように言っておくが、私は決してリーガル盤が嫌いな訳ではなく、今では好きなアルバムの1枚だ。ここでは単なる比較として挙げただけだ。)
嗜好があまりにギターだけに偏るのもどうかと思うが、B.B.はシンガーでもあり偉大なギタリストでもあるのだから、ギター・プレイの善し悪しや演奏時間の長さも重要なファクターになるものだ。
因みにこの曲はオーディエンスとの掛け合いというか、やりとりが面白い曲であるがこの時点での日本ではまだまだ曲に対する理解度が低いようで、客席の反応は少ない。

フレディもアルバートも亡き今、B.B.にはまだまだ頑張ってもらいたいが、最近ではさすがに年齢のせいか座ってギターを弾いているようだ。
もともとセミアコを持ってもギターの大きさを感じさせない体格ではあったが、最近はますます巨大化し、ギターがウクレレのように見えるのはいささか心配である。
この作品を持っていないブルース・ギター・ファンの方、廃盤にならないうちに買っておいた方がイイですよ。

当初ライブ・イン・ジャパンは友人が録音してくれたテープを持っていたので、アルバムを買わなかったが後で泣きを見た。どうしても欲しくて探し回ったがとうとう入手できなくて、代わりに手に入れたのがこれ。
2枚組が入手できなかったのは残念ではあったが、まあテープはあった訳だし、このアルバムもそれなりに良かったので一応は満足した次第。
冒頭に掲げたCDのジャケット・デザインもなかなか好きだが、このアルバムの写真も良い。
基本的に歌うときはギターを脇に避けるというB.B.のスタイルが上手く捉えられている写真だと思う。
ギターが大きく写っているのも嬉しい。