Chet Atkins
Plays Back Home Hymns


01 Take My Hand,Precious Lord
02 Amazing Grace
03 Will The Circle Be Unbroken
04 In The Garden
05 When They Ring The Golden Bells
06 Just As I Am
07 Further Along
08 Just A Closer Walk With Thee
09 The Old Rugged Cross
10 Lonsome Valley
11 God Be With You
12 Where You There
1962年作品

BMG 446802
(1998年CD復刻)



これは1962年の作品である。Hymnsとは聞き慣れない言葉だが、直訳すると「賛美歌・聖歌」という意味であり、欧米の歌手、特にアメリカの歌手などはこの類のアルバムをそのキャリアの中で1枚は出すという人が多い。
日本人の私にはその辺の心理は良く分からないが、こういうアルバムを出す事が自分のキャリアの中で区切りというか、集大成というか、何かひとつ記念碑的なところがあるのかもしれない。
残念な事に日本でこういう音楽を好む人は少ないのか、アメリカ本国では多数発売されているHymnものも日本では発売されないケースが多いようである。
1962年のチェットというと、他には「Caribbean Guitar」という名盤がリリースされた年で、まさに脂が乗っていた時期という事もあって本作も素晴らしい出来である。
個人的な事を云わせてもらえば、私はHymnものが大好きなのだ。決して宗教的バックボーンがあっての事ではないのだが、一般的にHymnものはメロディーが大変に美しく、聞いていて心が癒される気がする。
そう、元祖「癒し系」の音楽なのだ。
単純な物の見方だが、まさにその辺が宗教的なのかもしれない。
このアルバムではチェットお得意のギャロッピング・ギターは3曲目の「Will The Circle Be Unbroken」や10曲目の「Lonsome Me Valley」で僅かに聞ける程度で、ギャロッピング・ギターを聞きたいリスナーにとっては物足りない内容かもしれないが、楽曲の良さも相まって素晴らしい出来になっている。
当サイトのジャズのコーナーでジョニー・スミスを取り上げていて、チェットがジョニー・スミスからも少なからず影響を受けているのではないかと書いたのだが、それはこのアルバムを聞いているととても強く感じる事である。
このアルバムで聞く事が出来る、噛み締めるようなピッキングや和声の美しさは、他のチェットのアルバムではあまり聞けない部分を多く含んでいるように思う。
そしてもうひとつ他のアルバムとの関連を感じる事がある。
それはチェットがプロデュースしている「We Dig Mancini」というアニタ・カー・シンガーズが1965年に出したアルバムである。
タイトルが示すようにこのアルバムはヘンリー・マンシーニの映画音楽を、チェット・ファミリーと云ってもいいアニタ・カー・シンガーズが歌った名盤であり、1965年のグラミー賞・ベスト・パフォーマンス・バイ・ア・ヴォーカル・グループ・カテゴリーで見事に受賞している。
ここではチェットはプロデュースに専念していてギターを聞く事は出来ないが、アルバムは見事にチェット・カラーに仕上げられており、マイ・ベスト・アルバムの1枚になっている。
ついでに紹介しておくと(チェットはまったく関係していないが)アニタ・カー・シンガーズの別のアルバムでは、バート・バカラック/ハル・デヴィド作品を歌った1969年の「Reflect」というアルバムが素晴らしい出来だ。
2001年の初頭現在、「We Dig Mancini」はCD化されていないが、「Reflect」は「Velvet Voices and Bold Brass」というアルバムと2in1で2000年に復刻されているので興味のある方は聞いてみてほしい。
余談だが「Play Back Home Hymns」は都内のCDショップでは1200円前後という嬉しい値段で売られている事が多い。

Anita Kerr Singers
We Dig Mancini


チェットのプロデュースによる1965年の作品。
マンシーニ作品を叙情豊かに歌い上げた名盤である。最近アニタ・カー・シンガーズのアルバムも少しずつCD化されてきているようだが、残念な事に本作は未CD化。